根室市は1日、花咲港に上陸するロシア人船員向けの案内所「市インフォメーションセンター」(花咲港)を3月末で閉館すると発表した。冷戦終結後の1992年8月に開設した施設で、ロシア語を話す職員が常駐し、買い物などの相談に応じてきた。日ロ交流を30年余り支えたが、近年はスマートフォンで情報を簡単に入手でき、利用が激減し、必要性が薄れたと判断した。(北海道新聞2024/3/2)
根室市内へのロシア人の立ち入り禁止規制が91年に緩和されると、生活習慣の違いによるトラブルが発生したため、市は花咲港に近い木造平屋建て約70平方メートルの旧郵便局を改装し、交流拠点も兼ねて開設。バスの時刻表や買い物情報などの冊子を無料で配るとともに、ロシア語の本や映画のビデオもそろえ、ロシア人が集う場所になった。
当初は嘱託職員の能登静子さんが独学でロシア語を学んで対応。能登さんが亡くなった2001年から常駐する佐々木雅史さん(64)は「2000年代前半は(北方四島との)ビザなし交流で知り合った根室市民への手紙がロシア人から届き、年間100通近く翻訳したこともあった」と言い、交流をつなぐ役割も担った。
ただ、ロシア人の利用は1998年の年間1764人が最多で、新型コロナ禍前の2019年は169人に減少。近年は10人に満たなかった。石垣雅敏市長は「施設はなくなっても根室市が果たしてきた日ロ交流の機能を守っていきたい」と話している。(川口大地)
1992年の開設から日ロ交流を支えてきたロシア人船員向け案内所「根室市インフォメーションセンター」。3月末で30年余りの歴史に幕を引く=1日、根室市花咲港
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