政府は2024年度、北方領土など領土問題に関する日本の立場を発信する「領土・主権展示館」(東京・千代田区)をリニューアルする。かつて日本人が島で暮らした様子などを映像で追体験できるプロジェクションマッピングの導入が柱。文字情報中心の従来の展示を見直し、関心の低下が懸念される若い世代の来館を増やしたい考えだ。(北海道新聞2024/3/4)
展示館は18年1月に日比谷公園内に設置。当初は島根県・竹島と沖縄県・尖閣諸島の関連資料を展示していたが、20年1月に現在の霞が関のビル内に移転した際に、北方領土関連の展示を新設した。展示スペースは全体で約700平方メートルで、それぞれの問題に関する歴史的経緯や日本の主張に関するパネル、実際に使われた生活用品などを紹介している。
来館者数はここ数年、年間約1万人の横ばいで推移し、約6割を45歳以上が占める。内閣府の昨年の世論調査では、ロシアが不法占拠している北方領土の現状について若年層の認知度が低く、こうした世代の受け入れ拡大を目指す。
新たに導入するプロジェクションマッピングは、展示スペースの一角に特設コーナーを設け、上下左右、前方の5方向に北方領土や竹島、尖閣諸島に関する映像を投映。それぞれの領土にゆかりのある動物の視点で島を紹介する。北方領土の映像では、自然や元島民の生活、旧ソ連軍の侵攻で故郷を奪われる様子などを伝える予定。アニメやコンピューターグラフィックスの活用なども検討している。
このほか、子どもが楽しめる体験型の展示も増やし、修学旅行など学校行事での利用も呼びかけていく。日本の主張を海外でも理解してもらうため、領土問題に関する最新の情勢やニュースを紹介する英語のメールマガジンも始める。
関連予算として、政府は23年度補正予算に7億3千万円、24年度予算案に3億8千万円を盛り込んだ。リニューアルは24年度中の完了をめざす。内閣官房領土・主権対策企画調整室は「多くの国民が領土問題に関心を持つよう、さまざまな取り組みを実施したい」と話す。
年間約1万人が訪れる東京・霞が関の「領土・主権展示館」=1日(玉田順一撮影)
歴史的経緯などを記したパネルの展示など、文字情報が多い現在の「領土・主権展示館」=1日、東京・霞が関(玉田順一撮影)
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