ロシアが実効支配する北方領土を日本に引き渡すべきだと主張したとして、国後島在住のロシア人男性が、島の裁判所から行政罰の警告を受けたことが13日、関係者への取材で分かった。朝日新聞電子版で2022年1月に公開された記事に男性のコメントが掲載され、ロシア連邦保安局(FSB)が国内法に抵触するとして捜査していた。(北海道新聞2024/3/14)
ウクライナ侵攻以降、ロシアでは言論統制が強化されており、日本メディアにもロシア治安機関が監視の目を向けている実態が浮き彫りとなった。欧米と歩調を合わせた厳しい対ロ制裁で日ロ関係が悪化したことも背景となっている可能性がある。
裁判所の決定は今月5日付。決定文書によると、男性は「4島を引き渡す必要がある」と主張したと記述されているが、記事中で男性はそのような主張をしていなかった。
朝日新聞の記事の中で、男性は「第2次世界大戦の前に、北方領土の4島は確かにずっと日本のものだった」と指摘。1956年の日ソ共同宣言に従って歯舞群島と色丹島の2島を引き渡すことは「日本の主張にも一定の正当性がある国後、択捉両島を巡る紛争を引き起こし、ひいては戦争につながる恐れすらある」ので反対だと主張した。
一方で決定文書では、男性の主張は「他国へのロシア領割譲の呼びかけとして人々に受け止められ」領土の一体性を侵害したと指摘された。その上で法律への抵触は初めてであることなどを考慮し、懲役や罰金は科さずに警告の決定を下した。
男性は共同通信のオンライン取材に対し、新聞記事の内容は事実だと認めた。上訴はしないという。朝日新聞社広報部は「コメントする立場にない」としている。(共同通信が配信)
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