オホーツク海を望む崖の上にあるノツカマフ2号チャシ跡
根室市内に残るアイヌ民族の遺跡「チャシ跡」の推定来訪者数が2023年度は前年度比22%増の6062人(速報値)と過去最多になった。アイヌ民族の文化や北海道の歴史に関心がある個人客の増加が背景にあるとみられ、最多記録の更新は2年連続。市観光協会は「目的を持って旅行する人が増えている。根室の場合は歴史に興味を持ってくれているのだろう」と手応えを感じている。(北海道新聞根室版2024/4/10)
チャシはアイヌ語で「柵囲い」の意味。市内に現存する32カ所のチャシ跡の多くは海岸にあり、16~18世紀ごろ、アイヌ民族の儀式や見張り、交易の場、とりでなどとして築かれたとされている。現地には壕(ごう)や盛り土が残っている
推定来訪者数は、公益財団法人「日本城郭協会」(東京)が06年に日本100名城の「お城番号1」に「根室半島チャシ跡群」を登録したことをきっかけに集計を始めた。具体的には日本100名城のスタンプを根室市歴史と自然の資料館(花咲港209)で押した人数や、団体旅行者数などから、市観光協会が人数を推計している。
07年度にわずか50人だった来訪者数はスタンプ収集を目的に訪れる人らで増加し、14年度に1618人と初めて千人を突破した。23年度は団体数が前年度比4件少ない23件に減ったにもかかわらず人数は同1113人増え、個人客が伸びている。
20年には日本遺産「『鮭(さけ)の聖地』の物語」の構成遺産になったことや、アイヌ文化への関心の高まりも来訪者の増加を後押しする。
現在、市内で見学用に整備されたチャシ跡は「ノツカマフ1・2号チャシ跡」(牧の内)と「ヲンネモトチャシ跡」(温根元)の2カ所。難点は駐車場の狭さで、このうちノツカマフは乗用車が3台程度しか止められず、場所も分かりにくい。このため市は24年度、ノツカマフの駐車場や休憩場の整備について基本構想をまとめる方針だ。
市観光協会事務局の永沢大吾次長(45)は「チャシ跡を訪れた歴史好きの観光客に根室の他の歴史資源もアピールし、地域を訪れるリピーターを増やしたい」と話す。市歴史と自然の資料館ではチャシ跡のジオラマや動画も楽しめる。(大井咲乃)
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