外務省は16日、2024年版外交青書を公表した。ロシアの侵攻が続くウクライナへの支援を続ける方針を堅持し、対ロ制裁を続けると明記。また「ウクライナ侵略と東アジアにおける力による一方的な現状変更の試みは地理的に隔絶された別個の事象ではない」と中国の覇権主義的な動きを念頭に懸念を示しつつ、日中関係で「戦略的互恵関係」の表現を5年ぶりに用い、関係安定を目指す方針を示した。(北海道新聞デジタル2024/4/16)
青書では、国際的な支援疲れや中東情勢の悪化で、「ウクライナ情勢への関心低下を指摘する向きもある」とした上で、法の支配を守り抜くことが不可欠と強調。「ウクライナに寄り添った支援を行っていくことは待ったなしの課題」とし、生活再建や、経済復興、地雷処理など広範囲で支援を行うとした。
北方領土問題では前年と同様、「ロシアによる不法占拠」や「日本固有の領土」との表現を使い、中断が続く北方四島交流事業では特に元島民の墓参再開に重点を置く方針を明記した。
軍事演習など北方四島でのロシアの軍備強化の動きは「日本の立場と反し、受け入れられない」と指摘。ロシアから北朝鮮に対する軍事支援の可能性について「懸念を持って注視している」とした。
一方で「ロシアの市民社会、特に若い世代との接点を維持する」として、昨年は政府レベルで見送るとしていた日ロ間の文化・人的交流については「適切な範囲」で実施していく方針を明記した。
対中国では、昨年11月の日中首脳会談で、共通の利益に向けて協力する戦略的互恵関係の推進を再確認したと説明。日本として主張すべきは主張しつつも、対話を重ね「建設的かつ安定的」な2国間関係構築を目指す方針を打ち出した。
今月、岸田文雄首相が国賓待遇で訪問した米国との関係では、両首脳・外相間の深い信頼関係の下、日米同盟はかつてなく強固になっていると強調。24年は米大統領選など世界各地で重要な選挙な選挙が予定され、「国際情勢は重要な局面を迎える」と指摘した。
外交青書は前年1~12月の日本外交や国際情勢の記録。外務省のホームページでも公開される。(今井裕紀)
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