ロシアのウクライナ侵攻を受け、日ロ関係が悪化する中、旧ソ連映画の上映会を東京で続けている。「ロシアは隣国。どんな時代でも相手を知る窓口は必要です」
東西冷戦時代、あまり情報が入ってこない旧ソ連に関心を持った。ロシア語専攻の大学に合格したが、周囲に反対され入学を辞退。それでもロシア語の勉強を続け、東京都内の大学でロシア語の非常勤講師を務めるようになった。
知人の紹介で、6年前からロシア映画の字幕作成に携わる仕事も始めた。「映画は国民の生活や笑いのツボがわかる」。日ロの相互理解に役立つと手応えを感じていたが、2022年2月にウクライナ侵攻が始まった。
対ロ制裁の影響でロシアの配給会社に送金できず、現代のロシア映画の上映は困難に。字幕翻訳の仕事もなくなった。「こんな時代に何ができるのか」。悩んだ末、鉄のカーテンに閉ざされていた時代の旧ソ連の映画の上映会を思いついた。
旧ソ連映画の著作権を持つロシアの映画スタジオと交渉し、無償で日本語字幕を提供することで上映権を獲得。昨年1月から「発掘上映会」と題し、旧ソ連で人気だったガイダイ監督のコメディー映画などを計7回上映した。毎回100人超が訪れ、5月にも都内で開催予定だ。
米ソ友好をテーマに両国首脳の協力を描くなど今の時代では考えられない作品もある。「映画は歴史の一ページにもなる。隣国や複雑な世界情勢を知るため、過去を発掘することは大切だと信じている」。東京都出身、都内在住の54歳。(北海道新聞2024/4/26)
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