アイヌ民族の遺跡「チャシ跡」を研究。チャシは見張りや砦、祭祀の場などとして築かれ、根室市では海岸の崖の上など32カ所にある。猪熊樹人さん(47)は「この場所から見える景色を昔の人たちも見ていた」と思いをはせる。同市歴史と自然の資料館学芸員としてノツカマフとヲンネモトのチャシ跡2カ所を整備し、看板や地図も作った。約20年前はほぼいなかった来訪者は昨年度、推定6062人と最多を更新した。(北海道新聞道東ワイド2024/5/1)
宮崎県出身。名古屋市の南山大、名古屋大大学院などを経て2005年に根室市の学芸員になった。専門は考古学。大学では弥生時代から中世の釣り針を研究した。人類の水産資源利用や食文化に関心があった。
根室に来た翌年の06年。国指定史跡「根室半島チャシ跡群」(市内24カ所)が日本城郭協会(東京)の日本100名城に選ばれた。
スタンプラリーなどで来訪者の増加が見込まれたが当時のチャシ跡は「背丈ほどの草があってどこにあるかも分からない状態」。草を刈り、環境を整えた。地域のボランティアや市観光協会と連携し、団体向けにガイドツアーも行った。これが好評で「人気を下支えしてもらった」。
整備した2カ所は道内約500カ所のチャシ跡でも大きく、貴重な場所。特にノツカマフはアイヌ民族がに和人に決起した1789年の「クナシリ・メナシの戦い」でアイヌ民族が処刑された場だ。今後はアイヌ民族の儀式もできるような休憩所をつくる案もある。「根室半島は北海道やアイヌ民族の歴史を知る上で重要です」と強調する。
2019年に対岸の北方領土・国後島のチャシ跡をビザなし交流で訪れた。「文化的に根室海峡は一帯」と話す。チャシ跡は草が短い5月までが見やすい。「資料館にも来て根室の歴史を感じてほしい」
<メモ>根室市歴史と自然の資料館にはチャシ跡のジオラマや映像もある。午前9時半~午後4時半。月曜、祝日休館。月曜が祝日の場合は翌火曜も休館。電話0153・25・3661。日本100名城のスタンプは同資料館、根室駅前の観光インフォメーションセンター、納沙布岬の北方領土資料館にある。
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