サハリンや北方四島の日本車、ロシア軍に提供 戦地ウクライナへ

軍仕様の濃いカーキ色に塗装され、医薬品や衣類、食料などの支援物資が詰め込まれたトヨタ・ランドクルーザー=5日(シャリフリン・サハリン州議会議員テレグラムより)

 ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中、北海道に隣接する極東サハリン州北方領土にある日本車が、前線のロシア軍に送られている。兵員輸送などに活用するため、民間の軍支援団体が市民らに自動車の譲渡などを呼びかけ、6月以降に少なくとも日本車3台が軍に引き渡された。極東では日本車が愛用され、中古車の輸入も続いており、今後も同様の動きが続く可能性がある。(北海道新聞デジタル2024/7/13)

■支援団体、市民に譲渡呼びかけ

 「近い将来、この車は特別軍事作戦で戦闘任務を遂行する」。シャリフリン州議会議員は5日、通信アプリ「テレグラム」の動画でこう説明した。動画には軍仕様のカーキ色に塗られたトヨタ自動車の「ランドクルーザー」が映っている。

 自動車を軍に提供する活動は市民約80人が参加する「サハリンの庭」という軍支援団体が主導し、シャリフリン氏が公的な手続きなどを支える。5月から市民に譲渡を呼びかけたり寄付金で購入したりし、整備した上で医薬品などを詰め込んで軍に引き渡している。

 6月に入り、北方領土択捉島の実業家とサハリン市民が三菱自動車日産自動車のスポーツタイプ多目的車(SUV)を譲渡し、ランドクルーザーは同島の州政府機関などが寄贈した。団体によると、現在はスバル製SUVを整備中といい、日本車が続々と集まっている。

 団体は9日、6月に軍に引き渡した国産車ウクライナ東部ドンバス地域を走る動画をテレグラムに投稿した。今後、前線で日本車が利用される映像が流れる可能性もある。

■背景に軍用車不足 日本車に脚光

軍仕様の濃いカーキ色に塗装されたトヨタ・ランドクルーザー=5日(シャリフリン・サハリン州議会議員テレグラムより)

 サハリンと北方四島は日本車人気が根強く、複数台所有する家庭も多い。悪路が多い中で「1990年代製が壊れず走っている」(四島関係者)などと評価され、オフロード型四輪駆動車やSUVが戦地で走行性能を発揮するとの期待も高いとみられる。

 ウクライナから遠く離れた地で車両集めが活発化する背景には、侵攻の長期化による深刻な軍用車の不足がある。ウクライナの調査団体などによると、戦地では無防備な民生用トラックやゴルフカートのような車両で移動するロシア兵が確認されている。シャリフリン氏は5月末、テレグラムで「前線の仲間は高性能車両を大量に必要としている」と訴えた。

 日本政府は2023年8月にロシア向けの自動車輸出規制を強化し、中古を含め排気量が1900ccを超える自動車などの輸出を禁じた。このため輸出は減少傾向だが、函館税関によると今年1~5月に道内から3300台超がロシアに出荷されるなど、自動車の供給は根強く続いている。「サハリンの庭」の関係者は10日、テレグラムで「さらに数台の車両を修理するために資金集めを続けている」と活動の継続を強調した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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