コウモリ研究チームが7月19日から24日まで国後島のクリル自然保護区にあるゴロヴニン火山(泊山)カルデラで調査を行った。調査にあったのはロシア科学アカデミー極東支部生物多様性連邦科学センター(ウラジオストク)研究員ゴロベイコ・ウリヤナ博士、モスクワ動物園研究員アナスタシア・カデトワ博士、ロシア科学アカデミー分類学・動物生態学研究所(ノボシビルスク)のアレクセイ・マスロフ研究員。
今回の調査は、これまで研究対象とされてこなかったエリアに生息するコウモリ種の個体群の状況を監視し、生物学・生態学に関する新しいデータを取得するとともに、島嶼部のコウモリ個体群の遺伝子プールを研究することが目的。
研究者たちはロシア連邦自然保護庁からサンプルの収集、コウモリを捕獲して足環を付け、生息地に放つ許可を得て、クリル自然保護区の南部アレクヒンスキー地区で調査を行った。コウモリを捕獲するために、調査エリアに個体が絡まる特殊な網を設置し、洞窟内のコウモリの繁殖コロニーを調査した。
「コウモリを捕獲するのは非常に困難な作業です」とリーダーのゴロベイコ博士は話す。「現在(7月末~8月初め)はコウモリの繁殖期であり、授乳中の雌が網にかかった場合は、すぐに網から外し、測定やサンプル採取、足環装着を行い、できるだけ早く野生に放たなければなりません」–。
今回の調査で5種類100匹弱のコウモリが捕獲され、足環装着された。国後島で最も数が多いモモジロコウモリ(Myotis macrodactylus)をはじめ、ドーベントンコウモリ(Myotis petax)、ヒメホオヒゲコウモリ(Myotis ikonnikovi)、チチブコウモリ(Barbastella pacifica)、オスのニホンウサギコウモリ(Plecotus sacrimontis)も1 匹も入っていた。
中には、足環が付いたメスのニホンウサギコウモリが 3 匹含まれていた。そのうちの 1 匹は、2011 年にロシアと日本の合同調査中に今回と同じ場所で 足環を付けた個体とみられている。コウモリはかなり長生きするが、13 年というのはかなり立派な年齢だ。
「国後島のコウモリの生態についてはほとんどわかっていません」と、モスクワ動物園のカデトワ博士は語る。「どの種がどこで越冬し、どのコウモリが日本に飛んで越冬するのかさえ、正確にはわかっていません。国後島で越冬できるのは、冬でも気温が零下にならない比較的暖かい場所だけだと言っても過言ではありません。深い洞窟、廃坑、噴気孔付近の岩の割れ目などです。国後島で凍った木の洞、小さな洞窟、廃墟で越冬するのは事実上不可能です。凍ってしまうからです。コウモリは夏の日中はそのような隠れ場所を利用できますが、冬は利用できません」–。
国後島には、サハリン州のレッドブックに掲載されているコウモリ3種が生息している。コテングコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、モモジロコウモリだ。この中で、モモジロコウモリは、島の人々が頻繁に遭遇するにもかかわらず、最も脆弱な種である。出産前に、モモジロコウモリのメスは繁殖コロニーを形成する。コロニーは海岸沿いの小さな洞窟や洞穴なとで、数百匹に及ぶこともある。繁殖期に洞窟に近づくとコウモリは一斉に飛び出して、大型の猛禽類であるカラス、カモメの格好の餌食になる。クリル自然保護区は、コウモリの生息地に踏み入ったり、光を当てたり、騒音を立てたりしないように観光客に呼びかけている。(citysakh.ru 2024/8/3)
コメント