全然ない―。北方領土・貝殻島周辺のコンブ漁が始まった15日、根室市内の漁港に戻った漁業者からは嘆きの声が漏れた。道東の前浜で行われるサオマエコンブ漁は今季、生育不良で操業を断念する漁協が多いだけに貝殻島産は貴重な存在。漁業者は今後に望みをつなぐ。(北海道新聞釧路根室版2024/6/16)
午前6時、漁船195隻が一斉に漁場に向かった。最低気温が全国で最も低い8.6度と冷えた同市納沙布岬では市民が旗を振って見送った。
今年は前浜の生育状況が悪く、出漁は例年より半月遅い。同岬灯台で出漁合図の旗を振った歯舞漁協(根室市)の小倉啓一組合長は「前浜の生育は芳しくなかったが、漁を継続することに意義がある」と語った。操業は4時間。歯舞漁協の指導船3隻と根室海上保安部の巡視船2隻が見守った。
午前10時ごろに各港に戻った漁業者から聞かれたのは「今年は少ない」「これはひどい」といった声だった。
温根元漁港に水揚げした第53幸郁(こうゆう)丸の本田敏己さん(70)は「50年以上やっていて記憶にないほど最悪。流氷だけでなく、海水温の上昇も影響しているだろう」と肩を落とす。珸瑤瑁(ごようまい)漁港に戻った中村嘉仁さん(22)も「身があまり入っていない。1本でも多くとるしかない」と言う。
別の漁業者も「悪い年よりさらにない」と語り、珸瑤瑁でコンブを干していた漁業者(57)は「いつもならもっと干場がコンブで埋まっているのに」と嘆いた。歯舞漁協昆布漁業部会副部会長の高橋昭彦さん(58)は「流氷の影響のためか浅いところにはコンブがない。深いところに期待したい」と希望を語った。
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