別海町郷土資料館は、絵本「アイヌ語通辞(通訳)加賀伝蔵物語」を制作した。江戸時代末期に野付半島などでアイヌ語通訳として活躍した加賀伝蔵の半生を分かりやすくまとめた。当時のアイヌ社会に深く関わった生涯がイラストタッチで描かれており、子供から大人まで学べる一冊となりそうだ。(北海道新聞根室版2024/4/11)
■野付半島での交流紹介
絵本は、伝蔵が15歳の時に生まれ育った秋田から今の北海道に渡り、アイヌ語の通訳を務めながら別海など道内で40年近く過ごし、古里に戻るまでを描いた。働きながらアイヌ語を習得。アイヌの人々に理解を示しながら、野付半島で一緒に畑作りをしたり、種痘接種を説得したりして交流する様子を紹介している。
文章を担当した同館の石渡一人(いしわたかずひと)学芸員(56)は「アイヌ民族に商人が非道な扱いをしていた時代に、今の根室管内にアイヌ民族と共に生きた人物がいたことを幅広く知ってほしい」と望む。
絵を描いたのは、町内のイベントのポスターも手がけている町職員の木幡友哉さん(43)。資料を参考に下絵を描いてパソコンで取り込み、色を塗った。完成まで1年半ほどかけたといい、木幡さんは「特に終盤の色合いに力を入れた。(伝蔵が)帰郷する場面の背景が変わっていくところを見てほしい」と話す。
カラー全52ページで、1月31日に300冊を発行。非売品で、270冊を3月末までに町内の小中高校や公民館、道内の一部の博物館や図書館などに配布した。制作費約94万円の8割に内閣府のアイヌ政策推進交付金を充てた。
町は2024年度事業で絵本を基にアニメを制作する計画で、DVDにして町内の小中高校に配布し、郷土学習に役立ててもらう。
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