根室市は24日、終戦まで北方領土・国後島と根室を結んだ電信用の海底ケーブルの中継施設「陸揚庫」の歴史的価値を解説する市民向け説明会を市内で開いた。講師を務めた市の谷内紀夫北方領土対策専門員は、参加した市民17人に「陸揚庫は本土側に残る北方領土とのつながりを示す唯一の施設だ」と説明。市が進めている陸揚庫の保存事業への理解を求めた。(北海道新聞根室版2023/9/27)
市政について市民の理解や関心を高める「市政ウオッチングねむろ」の取り組みの一環。道立北方四島交流センターで行った座学では、市が制作した陸揚庫PR動画を鑑賞。終戦直後の旧ソ連軍による北方領土侵攻の実態が、海底電信線を通じ陸揚庫経由で本土へ届いていたことを解説した。
谷内氏は「陸揚庫は物語性に富んだ北方領土の遺構。返還運動に活用すれば、多くの人の関心を集められる」と述べ、施設を保存する価値を強調した。
その後、実際に陸揚庫を視察。視察に立ち会った千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟)根室支部の角鹿泰司支部長(86)は「ボロボロの現在の姿は見る人にインパクトを与えると思う。うまく活用できれば、返還運動にも新たな展開があるかもしれない」と話した。
陸揚庫の保存を巡っては、市の専門家会議が3月に建物を覆屋で囲う案を軸にした報告書をまとめ、覆屋の建設や資料室の併設などに、2億~3億円かかると試算。市は、本年度中に基本設計をまとめる。(川口大地)
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