貝殻島灯台にロシア国旗 「誰が、何のために」 根室に驚きと不安広がる

 【根室】ロシアが実効支配する歯舞群島貝殻島に立つ灯台に、7月下旬からロシアの国旗が掲げられたことがわかり、地域の住民には「誰がなぜ、こんなことをしたのか」と驚きや戸惑いが広がっている。北方領土海域で漁をする漁業者や北方四島とのビザなし交流を続けてきた根室市内の関係者からは、ロシア側の対応に不安を抱く人も目立っている。(北海道新聞釧路根室版2023/8/5)

 貝殻島灯台のロシア国旗は7月27日に、約3・7キロの距離にある納沙布岬から確認された。根室海上保安部は2日、ロシア国旗のようなものが掲げられているのを巡視船から確認。根室海保によると、大きさは縦90センチほどとみられる。

 心配が募るのは、この海域で漁をしたり、通過することが多い漁業者だ。

 道東沖サンマ棒受け網漁で、10日に解禁を迎える全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)の一部漁船は、魚群がみられる太平洋の公海に向かう際にロシアが実効支配する北方領土海域を通過する。9月15日からは、2年ぶりにロシア主張の排他的経済水域EEZ)内でも操業が予定される。

 市内のサンマ漁師は「北方領土海域にも行くので、旗が何を主張しているのか気になる」。「なぜこのタイミングで旗を掲げたか」と不安そうに話した。

 8月後半には貝殻島周辺でナガコンブ漁が始まる見込み。漁師は「6月の貝殻島周辺のサオマエコンブ漁の時には旗はなかった。旗の掲揚を初めて聞き、驚いた」と困惑を隠さなかった。

 根室市民は新型コロナウイルスの拡大前まではビザなし渡航などを通し、北方四島のロシア人住民と顔の見える交流を続けてきた。日ロ交流団体「ビザなしサポーターズ たんぽぽ」代表の本田幹子さん(65)は「四島に住むロシア人と日本人が、互いに相手国への感情を悪化させなければいいが」と心配した。

 納沙布岬を訪れる観光客からも驚きの声が聞かれた。愛知県から来た安藤武司さん(69)は「誰がなぜこんなことをしたのか。四島を日本に返す気がないのだと思えてしまう」。スペインから訪れたローデス・カモスさんは「ウクライナ侵攻と何か関係があるのか、気になる。ロシアは信用できない」と語った。

 根室市の石垣雅敏市長は「貝殻島根室の行政区域内にある。遺憾だ」と話した。(川口大地、先川ひとみ)

 

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