「声途絶えれば風化」北海道の高校生が北方領土問題訴え

 ロシアが不法占拠する北方領土の元島民の高齢化が進み、返還に向けた機運の継承が課題となる中、北海道根室市の高校生が同世代の子供たちに領土問題を伝え聞かせる出前講座の取り組みを続けている。2日には、同市を訪れた東京都内の小中学生と向き合った。(産経新聞電子版2023/8/2)

 「北方領土と東京都では、どちらが大きいでしょうか」。北海道根室高校「北方領土根室研究会」の会長、半田つくしさん(18)と副会長、穐元心菜(あきもと・ここな)さん(18)が対面した小中学生らに問いかけた。

 約20年ほど前から活動する同会は平成21年から全国に出向き、北方領土問題に関する出前講座を行うようになった。新型コロナウイルス禍でのリモート開催も合わせると、これまでに100回を超えるという。

 「実際、問題が解決することは難しいと思う」「本当にこの活動に意味はあるの」。講座を聞いた同世代の学生から厳しい言葉をぶつけられたこともあったが、半田さんは「私たちがこの声を途絶えさせてしまえば、問題は風化の一途をたどるのみ。活動を続け、そしてつなげていくことが大切」と力説する。

 千島歯舞(はぼまい)諸島居住者連盟によると、終戦時に約1万7千人いた元島民は、今年7月末時点で約5千人に減少。平均年齢は87・8歳となった。今年度、語り部として同連盟に登録された元島民は39人。風化を防ぐためにも問題を語り継ぐ次世代の存在は欠かせない。

 「若い世代が立ち上がらなければならない」。そう力を込めた穐元さんは、曽祖父が国後島生まれの元島民4世。祖母はビザなし交流にも参加したというが、ロシアによるウクライナ侵略の影響もあり、自身はいまだ国後島を訪問できず「先祖が生まれた島の景色を見てみたい」と話す。

 「講座を聞いてくれた皆さんは、この瞬間から北方領土問題を各地に伝える情報発信者です。一人でも多くの人にこの問題を伝えてください」。講座の終わりに半田さんはそう呼び掛けた。

 講座を聞いた稲垣颯太さん(14)は「年代が近い人が積極的に発信する姿に感銘を受けた。自分も周囲の人に問題について伝えてきたい」と語った。(長橋和之)

 

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