北方領土へのビザなし渡航再開は優先課題 日本の外務大臣

北方領土(ロシア領クリル諸島の南部を日本ではこう呼ぶ—タス通信)への渡航再開は、現在および将来の日露関係における優先課題の一つだ」—13日、日本の林外務大臣は記者会見でこう語り、引き続きロシアに対し、交流の再開を求めていくと強調した。林外務大臣は同日行われた、岸田文雄首相と、ロシアが望ましくない団体に指定した非政府組織「千島歯舞諸島居住者連盟」の指導部との会談に同席した。岸田首相は「北方領土問題は国民全員の問題であり、政府と国民が力を合わせて解決する必要がある」と強調。「千島歯舞諸島居住者連盟」の活動を望ましくないものと認定したロシアの決定を改めて批判した。4月21日、ロシア検事総長は、「千島歯舞諸島居住者連盟」の活動について「ロシアの領土一体性を侵害することを目的としており、ロシアの憲法上の秩序と安全保障の基盤に脅威をもたらす」と指摘。また「組織の目標はロシアから領土の一部(国後島択捉島、小クリル諸島=色丹島歯舞群島)を奪うことである」として、ロシアにとって望ましくないものであると認定した。ロシアがウクライナで特別軍事作戦を開始した後、日本政府はモスクワに対していくつかの制裁を課した。これに対し、ロシア外務省は2022年3月、日本との平和条約交渉を終了すると発表した。1991年の協定に基づき実施されてきた日本人の南クリル諸島へのビザなし渡航を停止することも決定された。さらに、ロシア側は、南クリル諸島における共同経済活動に関する日本との対話からの離脱を表明した。(タス通信2023/6/13)

北方四島墓参「早期再開を」 千島連盟理事長と道知事、首相官邸訪れ要望 政府は対ロ強硬姿勢継続

(北海道新聞2023/6/14)

 北方領土の元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)の松本侑三理事長(81)や鈴木直道知事らが13日、首相官邸を訪れ、岸田文雄首相に北方領土墓参の早期再開などを要望した。首相は墓参再開に重点を置く考えを伝えたが、日本政府は7月に北大西洋条約機構NATO)首脳会議を控え、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの強硬姿勢を続ける方針。ロシア側は反発を強め、再開は見通せない状況だ。

 「北方四島交流事業の中で特に墓参の早期再開と、北方領土が日本の領土であることを国内外に通知してほしい」。5月末に新理事長に就任した松本氏は、首相との面会でこう訴えた。

 手渡した要望書では、墓参を含む四島交流事業の再開の見通しが立たない場合、船で根室海峡を訪れる「洋上慰霊」への支援を要請。北方領土に関する歴史的事実や日本への帰属の正当性を国際社会に強くアピールするよう求めた。

 首相は四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する方針に変更はないとした上で、「四島交流事業の再開は今後の日ロ関係の中で最優先事項だ」と説明。墓参再開に重点を置くとし、洋上慰霊についても支援する方針を伝えたが、具体的な見通しについては語らなかった。

 ロシア側は昨年9月、ビザなし渡航の三つの枠組みのうち自由訪問とビザなし交流の合意を破棄したが、墓参については政府間合意を唯一破棄していない。ただ、7月中旬には首相が出席を検討するバルト3国リトアニアでのNATO首脳会議で、反転攻勢を始めたウクライナへの支援などが話し合われる予定。外務省幹部は「ロシアとは対話する状況にない。墓参は正直、展望が見えない」と明かす。

 一方、在日ロシア大使館のオベチコ臨時代理大使は9日、ロシアの祝日「ロシアの日」のイベントで「日本の対ロ政策はますます悪化している」と批判。厳しい対抗措置を取ることを警告するなど、日本政府への反発を強めている。

 墓参は旧ソ連時代から人道目的で行われており、平均年齢が87歳を超えた元島民は、外交交渉に望みをかける。松本氏は要望後、衆院沖縄北方問題特別委員会に参考人として出席。「私たちの思いが一番伝わり、日ロ間で妥協や話し合いができるのが墓参だと思っている。政府はもっと強力に交渉を進めていただきたい」と思いを語った。(荒谷健一郎、小林史明

 

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