北方領土の人口、2年連続減 ウクライナ侵攻が影響か

 ロシアが実効支配する北方領土の2023年1月1日時点の総人口は、前年比354人減の1万8403人となり、2年連続で減少した。新型コロナ禍が落ち着き、季節労働者の移入などで増加した集落もあるが、駐留するロシア軍部隊がウクライナ侵攻に派遣されたことなどによる人口流出の勢いが上回ったとみられる。(北海道新聞2023/5/30)

 連邦統計局によると、国後島は1010人減の7715人、択捉島は135人増の6916人、色丹島は521人増の3772人。歯舞群島国境警備隊以外の住民がいないとされる。昨年2月のウクライナへの侵攻開始以降で、初の人口集計となる。

 人口流出が目立った国後島では、四島最大の集落、古釜布(ユジノクリーリスク)で949人減の7033人。国後島北方領土の総人口が6年ぶりに減った22年も増加したが、過去30年で2番目に大きい減り幅だった。

 関係者によると、駐留部隊の兵士と家族が多く暮らすが、兵士が島外に派遣されると同時に、家族も島を離れて故郷に帰る事例が多いという。昨秋以降、地対空ミサイル部隊などがウクライナに派遣されているとされ、島の人口減少につながったとみられる。

 択捉島でも、軍用飛行場がある天寧(ブレベスニク)で176人減の24人、駐留部隊司令部がある瀬石温泉(ガリャーチエ・クリューチ)で183人減の2113人となり、軍拠点で人口流出が目立つ。駐留部隊以外に、プーチン政権が昨年9月に発令した部分動員で四島からは少なくとも70人が招集されたほか、地元行政府が契約軍人の募集を強化したことも影響した可能性がある。

 択捉島の中心地、紗那(クリーリスク)は979人増の2537人だった。一方、数年前に荒廃した広大な旧軍キャンプの管轄が国防省から地元行政府に移管され、その後の開発が滞るゴルノエは、538人減の815人と大きく落ち込んだ。住宅や生活インフラが比較的整っている紗那への移住が進んでいるようだ。

 色丹島の斜古丹(マロクリーリスコエ)は8人増の2275人、穴澗(クラボザボツコエ)は513人増の1497人だった。両集落とも、地元水産企業が新工場の建設や港湾施設の増強工事を進めており、季節労働者が活発に移入したとみられる。

 複数の島民によると、季節労働者アルタイ共和国などロシア極東以外の大陸からが多くを占める。四島は、プーチン政権の定住策の一環で年金や給与の水準が高く設定されており、季節労働者が定住することも多いという。「年金などの恩恵を受けるために居住登録だけ残して島を離れる人がいる」(四島関係者)とされ、統計と実態が乖離(かいり)しているとの見方も出ている。(渡辺玲男)

 

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