「軍人が畳に土足で」元島民の語り部、DVDで残す 羅臼町が領土問題啓発へ制作

 【羅臼根室管内羅臼町は、北方領土の元島民の「語り部」の活動を記録したDVDを制作した。語り部の姿を映像で残す同町初の取り組み。語り部で町内最高齢の高岡唯一(ただいち)さん(87)のインタビューと語り部活動の様子を約50分間の映像に収めた。複製して6月中に根室管内1市4町などに配布する。(北海道新聞電子版2023/5/27)

 「大きな体の軍人2人が拳銃を構えて入ってきた。畳に土足で上がり、大声で何か言っている。父は黙って我慢し、母は泣いていた」。終戦後も10歳まで歯舞群島多楽島で過ごした高岡さんの体験は生々しい。

 北方領土を初めて学ぶ人の理解を助けるため、写真や地図などをインタビュー映像に重ねて挿入した。DVDは3月に完成し、3分間、30分間の短縮版も用意した。湊屋稔町長は「元島民たちの思いが伝わる作品になった」と話す。

 千島歯舞諸島居住者連盟によると、2022年度末の元島民は5296人で、平均年齢は87・5歳。このうち羅臼町の元島民は71人で、同連盟に記録が残る01年度の192人から大幅に減っている。町内で活動する語り部は6人で、元島民は高岡さんら2人のみだ。

 事業費80万円の半分は道の地域づくり総合交付金で賄った。町は地元のほか、領土問題の啓発にかかわる団体や施設、道、内閣府にも配る予定で、「児童生徒の教材などとして活用してもらい、領土問題への関心を高めてほしい」(企画振興課)と話している。(森朱里)

 

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