終戦直後まで北方領土・国後島と根室市をつないでいた通信用海底ケーブルの中継施設『根室国後間海底電信線陸揚施設(通称:陸揚庫)』について、これまでの取り組みや歴史的価値を紹介するシンポジウムが開催されました。
陸揚庫は昭和4年、四島の漁業を支える通信インフラとして当時の逓信省によって建築。その後、昭和20年8月28日のソ連軍による択捉島上陸以降の四島の緊迫した状況が、海底の電信線と陸揚庫を通じて至急電報や電話によって根室側に伝えられており、現在も道立文書館に、当時の電報21通と電話記録3件の実物が保管されています。
このような建築物的価値・歴史的意義から、令和3年、北方領土関連施設として初めて、国の登録有形文化財に登録され、本年3月には保存・活用方法を協議する専門家会議分科会から、これ以上の施設の劣化を防ぐため、「覆いをかける」ことでの保護が提言されています。
シンポジウムで北海道博物館の右代啓視学芸員は、「四島の記憶・歴史・文化を後世へ継承するためのシンボルとして陸揚庫の保存活用を考えていきたい。」と話し、平成10年に立ち上げた陸揚庫保存会の会長として長年関わっている久保浩昭さんは、陸揚庫の周知に向けた動線の整備のほか「学生への郷土学習として活用しては。」と提案。久保さんの長男で、根室高校在学中に、北方領土根室研究会で活動した歩夢さんはオンラインで参加し、「若い世代への領土問題啓発など、この先の活用が大事だ。」と訴えていました。(広報ねむろ2023年5月号より)
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