北方四島周辺の漁に暗い影 日ロ関係悪化、安全願う声

 ロシアのウクライナ侵攻に伴う日ロ関係の悪化が、両国間の協定に基づき行う北方四島周辺などの漁に暗い影を落としている。操業に必要な交渉が難航し「稼ぎ時」を逃す例や、ロ当局による日本漁船の「臨検」が増えているためだ。4島周辺の漁は「領土問題解決に向け環境整備の意義もある」と政府。漁業者は「戦争に振り回されず、安全な漁の実現」を願う。(静岡新聞2023/2/18)

 好漁場として知られる4島周辺海域の操業は北海道東部の漁師の大きな収入源となってきた。ただ過去にロ側による日本漁船の拿捕などが相次いだことから、日ロ両国は4島周辺や互いの排他的経済水域EEZ)で行う四つの漁で協定を締結。ロ側に協力金を支払う漁もあり、金額や漁獲量などを毎年交渉する。

 昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本が対ロ制裁を科して以降、ロシアは交渉姿勢を硬化。妥結が遅れるなどして、昨年は四つの協定のうち三つで漁の開始がずれ込み操業期間が短くなった。協定に基づく漁は魚種ごとに漁期が限られ、予定通り行えないのは死活問題だ。

 例年6月1日解禁の歯舞群島周辺でのコンブ漁は昨年、開始が3週間遅延。価値の高い「棹前昆布」は旬を逃して収穫が落ち込んだ。出漁した根室市の男性船長(50)は「手の打ちようがない事情で稼ぎ時を逃した。残念だった」と唇をかむ。

 ロシア当局が海上で漁船を止めて操業違反を調べる「臨検」を強化したことも悩みの種。道などによると、昨年の臨検はコンブ漁で2021年比約4倍、「安全操業」協定に基づくホッケ漁で同2・5倍に増加した。道の職員は「拿捕の恐れだけでなく、検査が長時間に及んで水揚げ後すぐ競りに出せない問題も生じ、痛手だ」と話す。

 ロシアは今年1月、「安全操業」協定を巡る今年の条件交渉に応じないと表明。先行きが見通せず、代わりの漁を行う漁業者も出始めている。

 ただ北方領土の主権問題を抱える中、外務省担当者は「4島周辺で日本の漁が続くことは、問題解決に向けた環境整備として意義が大きい」と強調。政府は漁ができない漁業者に補償する方針を示し、ロシア側に協議開始を求めていく考えだ。

 

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