(誇り高きトドの休息(2月8日、エレナ・リニク撮影)
国後島の住民が2月8日、ユジノクリリスキー岬(大岬)沖で数頭のトドを確認したとの報告を受けて、クリル自然保護区のスタッフが現地に向かった。同保護区は2015年からトドのモニタリングを実施している。ここは、太平洋から南クリル海峡(国後島と色丹島・歯舞群島に挟まれた海峡)を通り、国後島に沿って南下する、トドの移動ルートの1つとなっている。しかし、数年前までユジノクリリスキー岬へ上陸することはなかった。岩の上にいる3頭はオスで、繁殖地で生活するのに十分なほど成長している。ほかの3頭はまだ若いオスだ。性別は頭の形とグループ形成の特徴によって判別できる。オスは季節的な移動の中で、独身グループを形成することがよくある。2月9日、別のトドが岩場にやってきた。背中には複数の傷跡が見られた。繁殖期に他のトドとメスを巡って争った結果だ。すべてのオスに、そのような戦いによる傷がある。近年、ユジノクリリスキー岬では毎年、トドが来遊している。色丹島でも2022年10月にタチアナ岬でオスのトドが確認された。色丹島に来るトドは上陸しない。水産加工場から出る魚の廃棄物を狙って湾内で待っている。昨年12月から今年1月にかけて、色丹島では20頭を確認した。国後島では2月10日にユジノクリリスキー岬で20頭、ベスロフスキー半島(ケラムイ崎)で6頭が観察されている。トドはユジノクリリスキー岬のような新しい場所に上陸することに慣れておらず、人が近づいたりすると怖がらせることになる。「野生動物に近づかないことを強く勧める。トドが、この場所が安全だと考えるようになれば、国後島と色丹島に立ち寄り、島民を喜ばせることが良き伝統となるだろう」と、専門家は話す。トドは2021年ロシア連邦のレッドデータブックに記載された。カテゴリー3の希少種に分類されている。小クリル保護区にあるオスコルキ島(トド島=歯舞群島)には北西太平洋で最南端に位置するトドの繁殖地がある。(クリル自然保護区ウエブサイト2023/2/16)
岩の上のトドの群れ(2月8日、エレナ・リニク撮影)
ユジノクリリスキー岬(大岬)周辺のトド(アンドレイ・グリセンコのビデオから)
ユジノクリリスキー岬の岩にいる孤独なトド(2月9日、エレナ・リニク撮影)
ユジノクリリスキー岬のトドのグループ、約20頭(2月10日、エレナ・リニク撮影)
トドの撮影をする保護区のエレナ・リニク(2月9日、アレクサンドル・ヤコブレフ撮影)
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