択捉島 解体された紗那郵便局跡から出土した「半鐘」のナゾが解けた

 以前、北方領土遺産「四島の遺産たち」と題して「解体された択捉島の紗那郵便局の跡地から見つかった半鐘」について書いた。

 2015年6月9日、日本が建てた択捉島の紗那郵便局が解体された。その際、玄関向かって右側の地中から、煤と油にまみれた「半鐘」が布にくるまれた状態で見つかった。

 高さ50㎝ほどの「半鐘」には、外側から力が加えられて空いた穴があり、縦帯部分に「新合」の鋳型文字、背面に「第弐拾四号 昭和六年六月」と刻まれている。千島連盟の居住者地図を見ると、紗那警察署のそばに櫓が立っており、そこに吊られていた半鐘ではないかと考えられていた。

択捉島紗那村出身の岩崎忠明さん(札幌市)の話

「紗那警察署の脇に火の見櫓があった。今の電柱くらいの高さで、子供にとってはかっこうの遊び場だったが、登ることは禁じられていた。櫓には消火用のホースがかけられていて、よく乾かすのに使っていた。櫓には、確かに半鐘があった。空襲とか、火事とか、訓練などの時には、ガンガン鳴る鐘の音を聞いた記憶がある。櫓があった警察署から郵便局までは300メートルくらいはあるので、発見されたものが火の見櫓の半鐘だとして、なぜ場所が離れた郵便局の地中に埋まっていたのか、分からない

正面の建物が紗那警察署。櫓があり、半鐘が吊られている。

 疑問が解けた!! 紗那郵便局にも櫓があり、半鐘が吊られていた

 その謎が解けた。外地海外電気通信史資料「千島・樺太・沖縄・小笠原の部1 」 (1956年 日本電信電話公社)の中に、戦前の紗那郵便局の写真が掲載されている。よく見ると、局舎正面の向かって右側に櫓が立っており、「半鐘」がぶら下がっているのが分かる。局舎が解体された時、「半鐘」は「玄関に向かって右側の地中から見つかった」とされており、写真の櫓の位置と一致する。紗那警察署の櫓ではなく、紗那郵便局にあった櫓にぶら下がっていた半鐘とみてよさそうだ。

紗那郵便局全景。玄関右側にある櫓に半鐘が写っている。(外地海外電気通信史資料「千島・樺太・沖縄・小笠原の部1 」より)  

 「半鐘」は2021年7月時点で、紗那の博物館に展示されているのが確認できたが、新型コロナとウクライナ侵攻の影響で3年間、島に渡航できない状況が続いており、今現在どうなっているのかは分からない。

択捉島の地元紙「赤い灯台」のインスタグラムで紹介された「半鐘」。紗那の博物館に展示されていた。(2021年7月)

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