ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、24日で10カ月が経過した。釧路ハリストス正教会の内田圭一司祭(49)は侵攻開始直後にロシアの侵攻を非難し、即時停戦を呼びかける祈りを毎週行っている。同教会はロシアの正教会の傘下にあり、ロシア正教会のトップが侵攻を擁護しているだけに異例の対応とも言える。内田司祭は「ロシアに信徒の多い正教会の関係者が『戦争反対』の声を上げ続けることに意味がある」と話す。(北海道新聞釧路根室版2022/12/26)
「ウクライナに対する攻戦を止め、和睦と平和が栄えんがために祈る」。12月18日に釧路ハリストス正教会で行われた、キリスト誕生を祝う降誕祭の聖体礼儀。聖堂で内田司祭の声が響いた。同教会では侵攻開始3日後の2月27日の日曜日の祈祷(きとう)から、ウクライナでの戦闘の犠牲者のために祈り、即時停戦を呼びかけ続けている。3月上旬には「ロシア軍のウクライナ侵攻に対し、反対する」との声明も発表した。
日本の正教会は財政的にロシア正教会のモスクワ総主教庁から独立しているが、組織上は傘下にある。プーチン大統領の盟友とされ、ロシア正教会のトップに君臨するキリル総主教は今回の侵攻を肯定している。
日本への伝道以来、正教関係者は日露戦争の際に「ロシアのスパイ」と迫害されるなど、偏見や誤解を受けてきたこともあり、長らく政治的な発言を避けてきたとされる。だが、内田司祭は「ロシア国内に信徒が多い、正教徒が声を上げることで戦争はやめるべきだとロシア人に伝わると思った」と強調する。釧路ハリストス正教会に通うある信徒は「モスクワの正教会の傘下にあるかどうかにかかわらず、日本の正教会もおかしいことはおかしいとはっきり言うべきだ」と理解を示す。
内田司祭はロシア人に訴えるため、ロシア語で「戦争反対」と書いたプラカードも作成。知人を通し、ロシア国内在住のロシア人から「日本の正教会の中にも戦争に反対している人がいるのか」と反応もあった。「一方的な侵攻や、神が平等に与えた生命の尊厳を奪う行為は絶対に許してはならない。一刻も早く戦争を終わらせるため、できることは何でもしたい」と話す。(今井裕紀)
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