「島を訪ねたい」

(北海道新聞夕刊根室版2022/11/18)

 新人として中標津支局に着任して2カ月余、地域でさまざまな出会いを経験している。担当の標津町羅臼町では、晴れた日は海の向こうに国後島が見え、元島民、そして2世や3世と会う機会が多い。北方領土をこれほど近く感じられたことはない。

 元島民らの「語り部」活動も活発。9日には標津町の福沢英雄さん(82)が日大豊山高校(東京)の修学旅行生に体験を語った。自筆の絵を見せ「突然ロシア兵が土足で上がり込んできた」と当時の様子を生々しく伝え、生徒たちも食いつくように聴き入った。

 私は空知管内出身。これまで当事者から直接話を聞く機会がなく、「一度だけでも話を聞いてみたい」と思っていた。この地に住み、それが何度も実現できている。

 何人もの元島民が、島を追われた記憶だけでなく、豊かな暮らしや美しい自然についても教えてくれ、「いつか孫を連れてまた島に行きたい」と故郷を懐かしむ気持ちを伝えてくれた。

 出会いが重なるうち「島はどのような場所なんだろう」と強く思うようにもなった。今は止まっているビザなし渡航。再開されたらぜひ参加し、島の姿をこの目で見てみたい。(森朱里)

青空に映えるハマナス。向こうには国後島が見える=24日、標津町茶志骨

歯舞群島多楽島出身で北海道新聞の通信員を務める元島民・福沢さんが撮った写真。記事と共に2021/6/29 付の根室版に掲載された

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