北方領土元島民の高齢化が進む中、領土返還要求運動の世代交代が進んでいる。かつての居住地ごとにつくる「島民の会」は、市内の13団体のうち6団体の会長が島民1世から2世に交代した。ロシアによるウクライナへの侵攻で領土交渉が白紙に戻り、元島民らの落胆が隠せない中、後継者たちも運動のあり方を模索している。(新聞根室版2022/6/30)
島民の会は元島民らの親睦団体で、北方領土関係の行事への出席など返還運動にも協力している。2015年に国後島民の会で初めて2世が会長に就任して以降、後継者の会長が増えている。
歯舞群島勇留島出身の角鹿泰司さん(85)は昨年度の総会で、勇留島和合会の会長を2世の米屋聡さん(62)に引き継いだ。元島民の平均年齢が86・7歳となる中、角鹿さんは「2世に代わるタイミングを間違えれば、返還運動が尻すぼみしていく恐れがある。バトンタッチを繰り返しながら島の記憶をつなぎ、運動を続けることが必要だ」とし、活動の中心を後継者世代に移す重要性を訴える。
一方、ウクライナ侵攻を巡る日本の対ロ制裁への対抗措置として、ロシア側は領土問題を含む平和条約交渉の拒否を表明。墓参を含むビザなし渡航は当面見送られることになった。勇留島和合会の米屋さんは「島の返還という大きな目標も、墓参で島に渡るという小さな目標も見通せなくなり、運動を続ける意欲が全体的に下がっていると感じる」と話し、機運の低迷を懸念する。
厳しい状況下での世代交代に、後継者も活動方法を模索。勇留島和合会で元島民の証言や自由訪問時の写真などをとりまとめる計画を立てている。米屋さんは「2世以降は島での原体験がない。北方領土は日本の領土だと説得力を持って語るには、島の様子を記録し、後世に残さないといけない」と強調した。(武藤里美)
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