ロシアは、4月下旬に北海道北部(※知床沖)で沈没した観光船の乗客とみられる遺体がサハリン南部の海岸で発見されたと、日本側に通知した。遺体は救命胴衣を着用していたが、他の情報は発表されていない。NHKを参照してタス通信が伝えた。国後島では5月14日と20日にそれぞれ1人の遺体が見つかっている。(サハリン・インフォ2022/6/29)
サハリン沿岸で男性遺体発見 知床事故の不明者か、救命胴衣を着用
(北海道新聞2022/6/29)
オホーツク管内斜里町の知床半島沖で小型観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故を巡り、ロシア・サハリン州南部コルサコフ付近の沿岸で日本人とみられる男性の遺体が見つかったとロシア側から日本側に連絡があったことが分かった。複数の日本政府関係者が28日、明らかにした。「KAZU」と書かれた救命胴衣を着ており、海上保安庁は乗客乗員の可能性があるとみて、ロシア側に詳細を確認している。
政府関係者によると、ロシア国境警備局が28日朝、コルサコフ付近のオゼルスキー沿岸で男性の遺体を発見したと外交ルートを通じて連絡があった。遺体の損傷は激しく、携帯電話や車の鍵、時計などを所持していたという。第1管区海上保安本部(小樽)は同日午後、行方不明者の家族に伝え、所持品から身元の確認を進めている。
ロシア当局は日本側に対して、サハリン州が事実上管轄する北方領土・国後島で見つかった男女2人の遺体と同様に、身元特定に必要なDNA型鑑定のデータ提供を要請した。今回見つかった男性はコルサコフの遺体安置所に収容されているという。
事故は4月23日に発生し、乗客乗員26人のうち、乗客14人が死亡。12人の行方が分かっていない。国後島で発見された男女2人の遺体は、ロシア側のDNA型鑑定で、甲板員曽山聖(あきら)さん=当時(27)=と乗客の道内女性(21)のDNA型と一致し、1管本部は遺体を引き取った後に改めて身元を確認する方針。
男性遺体、知床から北西300キロ先のサハリンに 風影響か
(北海道新聞2022/6/29)
知床半島沖で沈没した観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の乗船者の可能性がある男性の遺体が、ロシア・サハリン州南部の沿岸で見つかったと日本側に連絡があった28日、乗客の家族からはロシア側に感謝し、不明者であることを願う声が上がった。乗船者だった場合、事故現場から約300キロ離れた場所で見つかったことになり、専門家は潮流よりも風の影響を受けて流されたとみている。
乗客の家族の女性は28日午後に第1管区海上保安本部(小樽)から遺体発見の連絡を受けた。女性は「日ロ関係が微妙な中、肉親を捜す私たちの思いをロシアの方々がくんでくれたことは、とてもありがたい」と話す。
カズワンの乗客乗員計26人のうち、これまでに身元が判明した14人は、知床半島沿岸と東側の海域で見つかっていた。北方領土国後島の西側でも乗客乗員とみられる男女2遺体が5月に見つかっている。
今回の事故に関する漂流シミュレーションを発表してきた一般社団法人水難学会理事で長岡技術科学大の犬飼直之准教授(海岸工学)は、サハリンで見つかった遺体が乗船者だと仮定した上で「救命胴衣などを着けていたため、海流よりも南東の風の影響を強く受けたのだろう」と話す。
犬飼准教授によると、サハリン東側には北海道のオホーツク海沿岸に向かって南下する海流があり、漂流物が水中にある場合は、北上する可能性が低いという。服や救命胴衣を着けて海面に浮いている場合は海流よりも風の影響を強く受けるといい、「5月の大型連休以降、知床半島沖では南東の風が続き、風に流されて北西方向のサハリン南部まで流れ着いた」とみる。
犬飼准教授は「行方不明者が今も海上を漂流しているとすると、サハリン南部の湾内や東部の沿岸で見つかる可能性がある」と指摘した。
知床半島周辺では、4月28日を最後に乗船者の発見は途絶え、国後島の西海岸で5月19日までに2遺体発見の連絡があって以降、行方不明者は見つかっていなかった。国後島の2遺体の引き渡しに向け、日ロ間で協議が続いている。(内山岳志、長堀笙乃)
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