日本政府は26日、2022年の北方四島ビザなし渡航について、墓参を含めて当面見送ると発表した。ロシア政府による「ビザなし交流」と「自由訪問」の停止表明を受けて判断した。日本外務省は「全面中止ではない」としているが、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、墓参も年内の実施は困難との見方が強まっている。(北海道新聞2022/4/26)
■元島民「日本側から打ち切ってはいけない」
ビザなし渡航は《1》日本人とロシア人島民が相互往来するビザなし交流《2》元島民や家族が古里を訪れる自由訪問《3》元島民らによる墓参―の三つの枠組みがある。ロシア政府は3月21日、日本の対ロ制裁への対抗措置として、墓参以外の、ビザなし交流と自由訪問の停止を表明していた。
日本外務省は、墓参を含めて当面見送る判断について「侵攻が続く状況で実施に向けた調整は難しい」と説明。政府内では、仮に墓参を実施できても、両政府間の緊張関係が影響し、ロシア当局やロシア人島民と日本人訪問団との間でトラブルが生じることを懸念する声も出ている。四島からのロシア人患者の受け入れも当面停止する。
ビザなし渡航はコロナ禍の影響で20年以降中止が続く。外務省によると、日本側は今年計19回の渡航を計画していたが、ロシアのウクライナ侵攻前からコロナ禍を理由に協議は進んでおらず、今後の対話の見通しも立っていない。
千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長代行の角鹿泰司さん(84)=歯舞群島勇留島出身=は「元島民は島に行くのをずっと待っており、今後どうなるか切羽詰まった思いで見ている人がたくさんいる」と強調。ロシア側が墓参停止に言及していないことから「日本側から交渉を打ち切ることはあってはならない」と訴えた。(文基祐、武藤里美)
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