故郷・国後を思い俳句を作る100歳 土田一雄さん

 北方四島国後島出身で、故郷を題材にした俳句を詠む釧路市在住の100歳。1922年(大正11年)に国後島乳呑路(ちのみのち)で生まれた。生家の裏には同島最高峰の爺々(ちゃちゃ)岳がそびえていた。(北海道新聞2022/3/19)

 「爺々岳やノスタルジァぞ夢の数」「国後の丘の細道昆布舟」。句からは「私の全て」と語る爺々岳などへの思いがにじむ。冬はスキー遊びをした故郷。太平洋戦争中は海軍に招集され、終戦後、乳呑路に戻ろうと根室から国後島の郵便局に連絡した際、旧ソ連軍の北方領土侵攻を知った。「戦争に負け、故郷にも帰れない」と思った。

 戦後はビザなし渡航で数回乳呑路を訪れ、最後は2015年。つえをついて島を歩いて回り、爺々岳を目に焼き付けた。「高齢でもう島には行けない。子や孫、ひ孫にも見てほしい」

 俳句を始めたのは90歳を過ぎてから。「帰れない故郷を句に残したい」との思いからだ。小学生の時から興味があったが「満州事変、太平洋戦争、戦後の食糧難ですっかり忘れていた」。その後、句集2冊を自費出版した。俳号は「爺山(ちゃざん)」で、「至福なり湯上がり一杯大ジョッキ」と暮らしを描いた句も。新聞への俳句投稿が生きがいだ。

 今年2月24日の100歳の誕生日祝いとして、孫4人、ひ孫5人のメッセージカードを受け取り「こんなにたくさんありがとう」と笑顔を見せた。

 元島民らでつくる千島歯舞諸島居住者連盟によると、会員の元島民で100歳以上は土田さんを含め全国で3人、道内では2人だけ。4月に誕生予定の100歳差のひ孫との対面を心待ちにしている。(今井裕紀)

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