終戦直後まで根室と北方領土国後島を結んだ通信用海底ケーブルの中継施設「陸揚(りくあげ)庫」の初の発掘調査と雑草除去が9、10の両日、市内西浜町の同施設で行われ、ケーブルの一部が新たに見つかった。作業を指導した北海道博物館の右代啓視(うしろひろし)学芸員は「北方領土とのつながりを示す本当に貴重な資料だ」と話している。(北海道新聞根室版2021/10/11)
陸揚庫は鉄筋コンクリート造平屋建て。1900年(明治33年)に旧逓信省が38キロにわたって敷設した海底ケーブルを地下から陸揚げするために建てられた。国の登録有形文化財に近く正式登録される。今回の作業は建物の保存に向けた取り組みとして市が主催し、9日の発掘調査にはボランティア17人を含む約30人が、10日の除草には市職員ら4人が参加した。
発掘調査では、参加者が小型重機やスコップで国後島に面する建物の北側を掘って調べた。約30分後に深さ約50センチの地点で直径5・5センチのケーブルを見つけると、「あった」と歓声が上がった。建物を波から守るために建てた海沿いの擁壁には、長方形の穴を二つ発見。一方の穴には、ケーブルの一部が残っていた。
10日は建物の周りに足場を組み、屋根に生えた雑草を職員たちが手作業で抜き取った。風で飛ばされた土が堆積し、コンクリートの隙間には草の根が入り込み、「建物の保存には良くない状態」(右代学芸員)だったという。11日には文化財建造物保存技術協会の専門家らが建物を視察した。
市の担当者は「市民にもボランティアとして関わってもらえた。陸揚庫の認知度を上げることは、領土問題への理解を深めることにつながる」と語った。(武藤里美)
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