膠着状態が続き、一向に進展が見られない北方領土交渉。そのうちの一つ、国後島から招かれざる珍客が現れたのは、8月19日のことだった。北海道の標津(しべつ)町に「亡命したい」と話す38歳のロシア人男性が流れ着いたのだ。(週刊新潮2021年9月9日号)
全国紙記者によれば、「男はダイビングなどで使うドライスーツを着用し、お腹に方位磁針をつけて、仰向けに浮かびながら海を渡ったそう。ただ、海峡の幅は24キロに及び、水温も15度程度。特別な訓練でも受けていないと不可能ではないかと、当局も首を傾げていました」
渡航方法は謎のままだが、日本政府を悩ませたのは、この男の処遇。政治難民として亡命を受け入れれば、当然、対露関係は悪化する。しかし、「何より頭が痛かったのは、この男が“わが国固有の領土”からやって来たということ。ロシアの実効支配下にある国後島を男が出発し、標津に現れたところで、あくまで日本側にしてみれば“国内移動”で“入国”には当たらない。強制送還するにも、“わが国”たる国後島に返すわけにはいかず、結局、サハリン州に送還という対応でお茶を濁すことになった」(同)
これぞ、日本政府を進退両難に陥れるロシアの作戦か。ところが、「このケースはどうも裏がなさそう」と、国際問題研究家の瀧澤一郎氏。
「彼はもともとロシアの電話会社に勤めていたようですが、プーチン大統領が行なった北方領土の無料土地貸与キャンペーンを使って3年前に国後島へ。見るべき資産も仕事もなく、島の海岸に乗り捨ててあったオートバイには“この売却代金を日本にいる自分宛に送金してほしい”と置手紙もあったとか。10年前にも日本旅行中にビザを切らして強制送還されたことがあるといい、単なる日本オタクといったところでは?」
トンだ風来坊である。
ロシア人男性が国後島の海岸に残してきたとされるバイク
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