「陸揚庫」親しまれる愛称を 保存、活用は市民運動で 根室でシンポ開催

 国の有形文化財となる見通しの「根室国後間海底電信線陸揚庫」の保存と活用を探るシンポジウムが7月31日、根室市内で開かれた。問題を洗い出す形で進められ「親しまれるための愛称が必要」「メンテナンスに『町医者』的な地元業者が関わる必要がある」「保存活用が市民運動となることが必要」などといった意見が出された。根室市はこの日の意見やヒアリング調査などを経て、2023年3月までに具体策をまとめたい考え。(釧路新聞2021/8/1)

 同陸揚庫は北方領土国後島と本土(根室市)を電信線でつないでいた施設。16日に文化審議会が文科大臣に有形文化財登録を答申した。北方領土関連施設としては全国初で、市は新たな交流方法を考える「北方領土対策に関する専門家会議」事業の一環として分科会を設け、陸揚庫の保存と活用を模索している。

 具体的な資料が乏しい同施設は1935年ごろに建築されているが、90年近く風雨や塩害、凍害にさらされている。1級建築士文化庁の主任文化財調査官も務めた国土交通省国土技術政策総合研究所の長谷川直司シニアフェローは「昔の素材にこだわる必要はなく、強度を持たせた修復をすべき。メンテナンスは地方の業者ではなく、町医者のように地元業者が関わるべき」とした。

 札幌大学の川上淳教授は「歴史的意義を忘れないための物的資料として活用すべきで、保存も活用も市民運動となるのが理想型」と市民主体の活動組織の必要性を訴えた。根室市史編さん委員の桐澤国男さんは景観や修景を視野に入れながら「クラウドファンディングのような形で発信するため、歴史的経緯や四島とのつながり、ストーリー性を持たせることで愛着を持ってもらえるのではないか」と保存と活用に必要な経費面について話した。

 また、コーディネーターの北海道博物館学芸員の右代啓視さんは「多くの人に親しまれるために名称や愛称が必要ではないか」と投げ掛けた。

 シンポジウムに先立ち、長谷川委員が、有形文化財として事例が少ない鉄筋コンクリート造施設の保存活用に向けて講演し、全国の事例を紹介しながら「みんなで議論し方向性を検討し、『保存活用計画』をつくること」と述べていた。(山本繁寿)

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