河野太郎沖縄北方担当相が、所管する北方領土政策で存在感を発揮していない。啓発強化などに意欲を示してきたが、就任半年を過ぎても目立った取り組みは見えず、得意とする会員制交流サイト(SNS)での発信も数少ない。兼務するワクチンや規制改革などの他の政策課題に比べ関心の低さは明らかで、前外相として領土交渉に携わった経験や発信力に期待した元島民は落胆している。(北海道新聞2021/4/4)
「若い世代の方に見ていただくのが大事。ネットを使ってPRしていく」。河野氏は3月31日、東京都内の領土・主権展示館で、北方領土の歴史などを伝えるパネル展を視察後、記者団にこう語った。
ネットを使った若年層へのPRは、河野氏が昨年9月に就任して以来の持論。3月30日の記者会見では、啓発キャラクター「北方領土エリカちゃん」のボーイフレンド「エリオくん」のツイッターを新たに開設したことや、ネットで影響力を持つインフルエンサーを北方領土の隣接地域に派遣したことを成果に挙げた。
だが、エリオくんを登録したフォロワー(読者)数は2千人弱。インフルエンサー派遣は、内閣府の主催で昨年9月に根室管内中標津町で開いたイベントに、札幌出身の女性タレントが参加したぐらいで、その後は目立った発信はない。
河野氏のツイッターはフォロワー数が230万人を超え、国会議員でトップを誇る。だが、河野氏が担当相に就任以降、ツイッターに投稿した1600件以上の中で、北方領土関連は昨年9月の道東視察や、領土・主権展示館を訪れた際などの10件程度にすぎない。
河野氏は道東視察時の元島民らとの懇談で、元農相の祖父・一郎氏、元外相の父・洋平氏と3代で北方領土問題に携わった経歴を挙げ、啓発活動に力を入れるとアピールした。根室市の80代元島民は「日ロ関係が動いていない今だからこそ世論を盛り上げてほしいと期待したが、SNSの発信ぐらいで高齢の私たちにはピンとこない」と嘆いた。
河野氏は北方相だけでなく行政改革・規制改革担当相も兼ね、1月からはワクチン接種担当も担う。60代の元島民2世は「あんなに役職をつければ何もできない。現状はパフォーマンスで終わりという印象で、不信感しかない」と語った。(古田夏也、武藤里美)
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