国後島のクリル自然保護区は南クリル諸島(北方四島)周辺海域に生息する海洋哺乳類の監視活動を実施している。国後島をエリアとするクリル自然保護区と、色丹島・歯舞群島をエリアとする小クリル諸島自然保護区は、太平洋とオホーツク海の両方を管轄下に置く数少ないロシアの特別保護区であり、多種多様な海洋哺乳類が生息し、研究者にとっても観光客にとっても興味深い地域だ。国後島のユジノクリリスキー岬(大岬)は、ユジノクリリスキー海峡(国後島と色丹島・歯舞群島間)に突き出た三角形の岬で、付近の水深は30m前後。岬の突端まで歩くと、アザラシやゴマフアザラシ、カマイルカ、ネズミイルカ、トドなどを観察できる。先日、保護区のスタッフがシャチ3頭を確認したのもこの岬だ。スタッフは2015年から、毎冬12月~5月まで監視を続けている。いまの時期は日によって3~40頭のアザラシがおり、100m~200m沖には2~25頭のトドが観察できる。双眼鏡で見ると、マーキングされたアザラシがおり、これらはクリル諸島北部のロヴシュキ列岩(牟知列岩)、同中部のライコケ島(雷公計島)とスレドネワ島(摺手岩)、ブラト・チルポエフ諸島(知理保以島と知理保以南島)の繁殖地からやってきた個体だ。南クリル地区(北方四島)では歯舞群島のオスコルキ島(海馬島)にアザラシの繁殖地が2カ所ある。国後島でエコツーリズムを推進している観光団体「南クリル・エススカーション」は、このほどユジノクリリスキー岬で、観光客向けに音声ガイドを製作し運用を開始した。南クリル諸島ではクジラ類、アザラシ、ラッコなど28種類の海洋哺乳類が確認されており、岬からまじかに観察できる魅力的なスポットになっている。(クリル自然保護区2021/2/18)
ユジノクリリスカヤ湾(古釜布湾)のトドの群れ。遠くにそびえるのはメンデレーエフ火山(羅臼山)
国後島・古釜布周辺地図
トドの群れ(2016年)
右側のトドには識別のための記号が付されている
ユジノクリリスキー岬に現れた3頭のシャチ
※写真撮影者はベロニカ・チホノワ、アレクサンドル・ヤコブレフ、マリア・ボロダフキナ、エレナ・リニック各氏
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