北方領土を事実上管轄するロシア・サハリン州政府が、国後島の古釜布(ユジノクリーリスク)郊外に建設を予定するごみ焼却施設の設計業務の入札で、ロシア企業が落札したことが分かった。日本政府は、北方四島での日ロ共同経済活動の具体化を目指し、焼却施設建設を含む事業案を提示していたが、計画に影響が出る可能性がある。(北海道新聞2021/2/14)
州政府関係者によると、施設の建設予定地は約3万5千平方メートルで、ごみの受け入れ能力は年1万3800トンを想定。下水処理施設なども設置する。入札は1月15日に行われ、ロシア企業5社が参加。モスクワ北東ヤロスラブリの設計会社「インストロイプロジェクト」が1549万ルーブル(約2200万円)で落札した。
同社はサハリン本島や国後島南部の泊(ゴロブニノ)で学校、幼稚園などの設計で実績があるという。設計業務完了の期限は8月末で、その後、建設業者の入札が行われる見通しだ。
両国外務省は1月29日、テレビ会議形式で、共同経済活動に関する局長級の作業部会を実施。日本外務省関係者によると、ごみ施設の入札についても議論しており「それを踏まえた上で、どうするかをロシア側と協議している」という。
両政府は、四島での共同経済活動で「ごみの減容対策」を優先事業に位置づけている。日本側は当初、分別や圧縮でごみを減らす設備や技術の提供を想定していたが、ロシア側が強く求める焼却施設建設を含めた事業案を提示。しかし新型コロナウイルスの影響もあり協議は停滞し、建設を急ぎたい州政府が昨年12月に入札を単独で開始していた。(ユジノサハリンスク 仁科裕章、東京報道 広田孝明)
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