サハリン州政府観光局はクリル諸島北部に連邦自然保護区を新設する動きに反対している。クリル諸島でリゾート開発を進める立場にあったドゥブロフスキー前観光局長は「保護区創設はサハリン州だけでなく極東全体のインバウンド観光の発展に対する抑止力となる」と県念を示していた。(サハリン・インフォ2020/12/3)
北クリルのシムシル島(新知島)、ケトイ島(計吐夷島)、シアシュコタン島(捨子古丹島)を保護区とするレドネクリリスキー自然保護区創設は2021年末までに国家プロジェクト「エコロジー」の中で構想されている。一方、アトラソフ島(阿頼度島)、パラムシル島(幌筵島)、オネコタン島(温禰古丹島)、シュムシュ島(占守島)では、州政府がリゾート開発を進めるロストゥリスムやローザ・クトールと手を組んで観光クラスターの創設を計画している。「観光市場における競争力を大幅に向上させ、人材の雇用確保と地域社会の安定的発展に役立つ」としている。
観光クラスター「オネコタン群島」構想では2021年にセベロクリリスク(パラムシル島)にレストランや会議場、客室92室のホテル建設を開始する。構想実現のために新たに法人が設立され、2025年までに18億ルーブルを投資する予定。
また、サハリン–カムチャツカ–チュクチカを周遊するクルーズルートの整備も計画され、極東における優先プロジェクトの1つに位置付けられている。州政府は「将来的には沿海地方–サハリン–カムチャツカの港をつなぎ、その中にはクリル諸島が含まれる」と語る。州観光局はクリル諸島に保護区を設けることは、こうしたビッグプロジェクトにとってマイナスと考え、新しい保護区を別の地域につくることを提案している。
ソチにスキーリゾートを造ったローザ・クトールは、カムチャツカ地方に観光クラスターを建設することを計画している。観光施設は世界自然遺産に登録されているカムチャツカ火山群に影響を及ぼす可能性があることから、ロシア政府は開発が予定されるエリアを世界遺産から除外することも検討している。
グリンピース・ロシアは「ローザクトールは既存の保護区や世界遺産に足を踏み入れようとするばかりでなく、新たな自然保護区の設立も妨げている」と批判している。また、WWF(世界自然保護基金)ロシアはクルーズ観光について「人々が自然に親しむために島々に行くときは、自然を元の状態のまま保存する保護区とプロのガイドの存在が不可欠」と話す。
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