「開発と保護」–サハリン州観光局が推進している観光クラスター「南クリル諸島」の基本コンセプトである。このため、構想策定には観光だけでなく、環境保護、生態学分野の専門家も参加した。国後島にあるクリル自然保護区のアレクサンドル・キスレイコ所長もその1人だ。ベラルーシ出身のキスレイコ所長は1984年、海軍の仕事で択捉島に来たのがきっかけで定住し、国後島を含め狩猟専門家として働いた後、2015年に自然保護区の所長に就任した。キスレイコ所長は「国後島、色丹島にとって観光振興は重要な方向性であり、整備のために配分される国家資金は地域経済の指標を改善させる。さらに、ホテル、カフェ、商店などのインフラの出現により、新しい雇用も生まれる」と期待する。クラスター構想策定にあたり、保護区内の道路や歩道整備を可能にする手法や国後島、色丹島の観光ルートづくりなどに協力した。所長はクラスター構想に盛り込まれた国後島の観光開発の提案は、価値があり興味深いと評価した。特に、チェトヴェリコフ岬とプザノフ岬(オリコノモイ崎)の展望台、ストルブチャティ岬(材木岩)に続くトレイル整備、ゴロブニノ火山(泊山)のカルデラにビジターセンターやゲストハウスの設置、太平洋戦争の遺産を活用した野外博物館の開設などを挙げた。また、ゴロブニノ火山のカルデラの噴気孔に観光客の安全面に配慮した柵を設置したり、チャチャ火山への登山出発地点にはしけ用の桟橋を整備することなども評価した。キスレイコ所長は「自然保護区内への観光客入込を1日ごと、あるいは季節ごとに制限すれば環境への負荷は最小限ですむし、施設を建設する場合でも、自然と調和した天然素材を使用するなど配慮が必要だ」と述べている。(サハリン・インフォ2020/9/29)
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