❐北方四島の話題
futurerussia.gov.ru/2020/5/5他
●…ロシアにはコロナウイルスの世界的流行が宣言されるずっと前から、人々が孤立して暮らしてきた島がある。サハリン州の国後島だ。アイヌ語で「黒い島」という意味である。人口約9,000人。今のところコロナウイルス感染者は1例も記録されていない。タス通信が運営するポータル「ロシアの未来–国家プロジェクト」では、住民たちがいま何を心配しているか、そして彼らの生活が自己隔離によってどう変化しているのかを探った。
●…「本土の人々は、クリル諸島の人は『外部』の問題を気にしないと考えています。同じことがコロナウイルスにも当てはまります。これは誤った意見です。クリル諸島の居住者は、サハリンと本土との関係で孤立していることを知っています。だからこそ逆に、私たちに迫り来るすべてのよりデリケートな問題に敏感なのです」と、ナタリヤ・サボチキナさんは言った。彼女は国後島の住民だ。
●…クリルの住民は孤立について幻想を持っていない。「私たちはコロナウイルスの感染拡大の脅威に対して非常に敏感です」とサボチキナさんは付け加えた。現在までに、サハリン州で30例以上の感染が確認されているが、すべてサハリン本島であり、クリル諸島では感染者が出ていない。クリル諸島に感染者が出て、特にその症状が深刻な場合には、彼らはサハリンに輸送される必要があるが、それは天候に大きく依存する。
●…当局によると、島では医師が不足しているが、これは医療スタッフの深刻な不足ではない。ユジノクリリスク(古釜布)には地区中央病院があり、地域の村には外来診療所と助産センターがある。しかし、高度な治療を必要とする患者は、緊急事態省のヘリコプターでサハリンのユジノサハリンスクに送られなければならない。
●…国後島の面積は約15,000㎡と広い。「コロナウイルスに感染した人が1人でもいたら、救うことはできません。島は大きくとも、人が住んでいるエリアは狭く限られています。私たちはみんな知合いです」と、ユジノクリリスクのヴィクトル・バシロフさんは言う。「クリル諸島がすべてから孤立していることは良いことです。おそらくウイルスは私たちのところまで伝わらないでしょう。しかし、もし感染者が出たら逃げる場所がありません」
●…国後島の住民の中には多くの楽観主義者がいる。特に「リモート」で仕事する人。彼らは自宅で過ごす時間を最大限に活用しようとしている。「今はどこにいてもかまいません。国後島、サハリン、モスクワ、そしてサンクトペテルブルク…。自宅にいながら、私たちは皆、同じ公演、展示会、オンラインコンサートに参加しています。オンラインのダンスレッスン、ヨガ、刺繍、料理…すべてのものに平等にアクセスできます」と、エレナ・チェルノバさんは言った。
●…最近まで、国後島は他のクリル諸島と同様に高速・高品質のインターネットを持っていなかった。住民は不安定で遅い衛星チャネルを介してネットワークにアクセスしていた。光ファイバー回線の出現により、住民は外の世界との距離を感じなくなった。「多数のユーザーが自宅にいてインターネットで作業しており、小学生も遠隔学習で授業を受けており、ネットワークに相当の負荷がかかっています。しかし、島に光ファイバーが持ち込まれた時から、インターネットは高速でアクセス可能になり、適切に機能するようになりました」と、サボチキナさん。
●…インターネットを利用していない高齢者の場合、現在の主な娯楽はテレビと本である。彼らの多くは自宅で出来る体操を始めた。「私たちの母親と父親はそのようなものです。若者とは異なり、常に物事で忙しいから。掃除、料理、自分の趣味、無限に続くテレビ番組、庭いじりなど。彼らは活動について考える必要はありません」と、エレナ・チェルノヴァさんは笑った。
●…クリル住民は本土の人々に劣らず、経済的に苦しい状況にある。3月30日から商店や公的サービス企業40社以上が活動を停止した。食料品店と重要な施設のみが運営されている。「以前2人が隔離政策に違反して摘発されたが、今では市民はすべてを理解して家にいます。人々は主に食料品店に行きます。買い物が終わるとすぐに家に帰ります。このため、昼食時と夕方には人の動きがありますが、それ以外の時間は通りに人の姿はありません」と、行政府は言います。
●…国後島の地区行政は、民間の起業家が隔離体制に苦しんでいるという事実を隠していない。 行政はまだどのように問題に対処すべきかわかっていないが、そのような状況が現在ロシア中に広まっていると考えて、自分自身を慰める。みんなの仕事が重要だ。たとえば、マニキュアサービスは必須の仕事ではないとみられがちだが、女性にとって重要かつ必要だ。政府はいくつかの措置を導入しており、徐々にすべてが解決されるだろう。
●…感染拡大の恐れの中でも、国後島の住民はお互いを助けようと取り組んでいる。若い人たちはボランティアに参加している。彼らは、年金受給者が家を出なくてすむように、医薬品や食料、日用品をアパートに届けている。多くの起業家は大きな損失を被っているが、住民に無料で商品の一部を提供している。たとえば、カフェを経営するヘンリエッタ・カチューヒナさんは、高齢者のために毎日ケーキを焼いて、ボランティアに届けてもらっている。すべての高齢者が家族と同居しているわけではない。子供たちの多くはサハリンや本土に住むようになった。隔離中の一人暮らしの高齢者にとっては、ボランティアが唯一の頼りなのである。
●…マスクが不足しているため、住民自身が友人や隣人、必要とする人のためにガーゼでマスクを作っている。「パンデミックについて知ったとき、私はすぐにマスクを縫い始め、近所の人に配りました。完成したマスクは行政に渡し、配布されています」とガリーナ・モストフシコバさんは言った。ユジノクリリスクの6人の住民は、自宅でマスクの製造に従事している。彼らは多くの人かボランティアに加わることを望んでいる。「なんてすばらしい!国後島の住民全員が力を合わせて、それぞれがコロナウイルスとの闘いに貢献しています」とサボチキナは言う。
●…国後島は他のクリル諸島と同様に、地理的に「孤立」しているにもかかわらず、決して「文明の終焉」ではない。国家の支援のおかげで、若い専門家がここにやって来て、観光とビジネスが発展している。パンデミックにもかかわらず他の地域と同様に生活は続いている。そして長い間、彼らは「孤立」した暮らしに慣れてきた。これは辺境の「トリック」–。
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