❐北方四島の話題
サハリン・インフォ2020/4/16
●…サハリンを飛びたった飛行機はエトロフに向かっていた。細い魚のような島がオホーツク海と太平洋の間に見えてきた。択捉島はいつも強い風が吹き、暴風に見舞われることが多いが、春と秋は空が澄んでいて暖かい。飛行機の窓から見ると、島の海岸線は水をかくネコの足のようだ。流氷とどんよりした雲の下で漁をする船、海は太陽の光を浴びてエメラルド色に輝く。飛行機は滑走路に向けて降下する。強い横風で機体が揺れると、乗客から悲鳴があがった。この島は磁石のように私の心を引き付けて離さない。
●…オリャ川河口で雪に覆われた幽霊船に出会う。プロストル湾に向かう海岸線は通行が禁じられているので、山道を迂回する。あたり一面の真っ白な雪原に笹の緑が映える。私たちの目的地はプロストル湾の丘のてっぺんにある岩肌から染み出す「滝の壁」だった。雲と海の光の中で幻のように火山が浮かぶ。古代の恐竜の尻尾のような岩が湾を突き刺している。巨大な目から幾筋も流れ落ちる滝を「涙の滝」と呼ぶ人もいる。
●…択捉島の集落はほとんどすべてが川の河口にあり、近くに温泉が湧いている。行政の中心地クリリスク(紗那)の郊外に1つ、そして島最大の水産加工場があるレイドヴォ(別飛)の近くに1つある。温泉は、択捉島の短い夏、台風や地震といった過酷な自然に耐える地元住民の忍耐に報いる贈り物だ。私の家族が住んでいたゴルノエの村から10kmの竹の茂みの中にある温泉は娘の皮膚アレルギーを治療してくれた。私たちは2年間、クマよけの信号拳銃で武装し、スキーを履いて毎週末に温泉に通ったものだ。今は訪れる人もなく、癒しのミネラルウオーターはクリルの土地を養っている。
●…ジープに乗って山に行く。時速10~20kmの速度で未舗装のでこぼこ道を上っていく。頂上を登り切ると、今度は海に向かって、ブレーキをかけながら滑り降りる。有名な「悪魔」が近づいてくる。カサトカ湾(単冠湾)には旧日本軍の基地があり、倉庫や病院があった。湾の両端を結ぶ鉄道があったともいわれている。地下には、人と自然によってつくられた数多くの地下通路があり、鍾乳石の美しい洞窟に入ることが出来る。
●…ボグダン・フメリニツキー(散布山)のふもとのヤンキトにプールやテニスコート、魚の孵化場まで備えた豪華ホテルがある。ヘリポート付きのVIP用ホテルは一泊30,000ルーブル。このホテルから数百メートルのところに、火山からオホーツクの海に流れ込む「黒い岩」–冷えて固まった溶岩の海岸がある。
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