●…遠隔授業システムを活用した「北方領土学習」の実験がスタートしました。根室市とシスコシステムズ合同会社の主催で、根室高校北方領土根室研究会と北海道北方領土対策根室地域本部が全面協力してくれました。
●…シスコの「デジタルスクールネットワーク」に参加する道内2校(大空町、夕張市)、道外5校(沖縄、宮崎、広島、東京、千葉)に授業や部活を終えた36人の生徒さんが集まってくれました。これまでの課外授業で最多の参加校になったそうです。
●…通信が出来るデジタル・ホワイトボード「Cisco Webex Board」を根室市の北方四島交流センターに持ち込み、WIFIに接続してインターネットで7校とシスコ東京オフィスと札幌オフィスを結び、本土最東端の根室市から課外授業を実施しました。
●…学習プログラムは、根室高校北方領土根室研究会の元島民3世の岡野真鈴さん(3年生)が北方領土問題の概要から出前講座など部活の取り組みを紹介。続いて、色丹島生まれの元島民・得能宏さん(85歳)がソ連軍の侵攻からロシア人との混住生活、サハリンを経由しての苦しかった引き揚げの体験、四島在住ロシア人とのビザなし交流について語ってくれました。
●…質疑応答では、7校の生徒さんたちから「領土問題を身近に感じることが出来た」「ビザなし交流に参加して北方領土を訪ねてみたい」などの感想が語られました。一番の盛り上がりは、アニメ映画「ジョバンニの島」を見たという男子生徒から、得能さんがモデルになった主人公・純平が淡い恋心を抱いたターニャについて「実在した女の子ですか」と質問が出た時でした。「本当です。ターニャを探そうという声も出たけど、互いに歳をとった姿は見ない方がよいでしょう」–。ユーモアを交えて答える得能さんの話術もあって、すっかり場が打ち解けて良いコミュニケーションがとれました。
●…遠隔授業システムを活用した実験は今後も継続して取り組みます。平均年齢84歳を超えた元島民が語り部として、全国各地へ出向いて体験を話していますが、体力的に負担が大きい。後継者である2世にしても、すでに50歳~70歳となって、やがて元島民と同じような状況に直面します。現役であれば仕事の都合でなかなか語り部に出ていけないという事情もあります。
●…遠隔授業システムのような仕組みが学校現場だけでなく、社会全体に広がっていくとすれば、その基盤を活用して効果的に啓発ができないか。デジタル・ホワイトボードには学習を支援する様々な機能があり、こうした技術を活用してもっと分かりやすい、共感してもらえる内容の北方領土学習プログラムを開発できないか。そんな視点で、この実験を進めていきたいと思います。
コメント