ロシア 地方自治体が公式チャンネルを国産「MAX」メッセンジャーに移行

エトセトラ

地方自治体が公式チャンネルを国産のMAXメッセンジャーに移行している。サービスは急速に利用者を増やしており、行政と国民のコミュニケーションにおける新たなプラットフォームとなりつつある。

ロシアでは3年前、政府機関と予算機関が独自のソーシャルメディアを維持することを義務付ける法律が施行された。これにより、すべての学校、病院、そして各省庁が国民とのコミュニケーションのためのチャンネルを利用できるようになった。現在、VKontakteには約17万3,000の公共ページがあり、5,700万人が利用している。

注)「Max」は、IT大手のVK社が開発したアプリで、同社はロシア政府の影響下にあり、国内最大のSNS「VKontakte(フコンタクテ)」も運営している。

MAXメッセンジャーの導入は、このシステムの発展における新たな段階を象徴している。 2025年8月以降、政府機関、地方自治体、そして構成団体の長が、この新しいプラットフォーム上でチャンネルを開設し始めている。MAXにはすでに87の知事、89の連邦構成主体(地方自治体)すべて、そして4,000以上の政府機関と地方自治体がページを開設している。学校、劇場、医療機関、そして青少年団体もこのサービスを積極的に活用している。

VK戦略プロジェクト担当副社長のルスタム・ハイブロフ氏は、政府機関のMAXへの移行により、政府と国民のコミュニケーションがよりオープンになると考えている。ハイブロフ氏は、MAXの技術力によって、セキュリティと利便性が確保されていると指摘した。

対話地域担当副局長のアンドレイ・ツェペレフ氏は、新しいチャンネルへの関心が急速に高まっていることを強調した。MAXに国家公開ページが開設されることで、国の情報独立性が強化され、検証済み情報へのアクセスが容易になると述べた。現在、MAXには約2万の公式チャンネルがあり、既に200万人が利用している。専門家は、今後数ヶ月で国家公開ページの数が4万に増加すると予測している。(sakh.online 2025/12/4)

ロシア、スマホ・端末に国産SNS搭載義務 行政・金融とも連携 情報統制強化の懸念(日本経済新聞2025/11/14)

ロシアのプーチン政権が国産の新しい対話アプリ「MAX(マックス)」の普及を急速に推進している。スマホなど新規端末への搭載を義務付け、対話機能以外に行政や金融サービスなどとの連携を進める。外資系対話アプリからの乗り換えも促し、専門家からは政権による情報統制が一段と強まるとの懸念も出ている。

ロシアがネットの自由さらに制限へ、政府公認アプリで-中国型モデル

政府系SNS企業VKを国家公認のメッセージサービスに指定

多機能型アプリ「Max」で国民のネット活動を広く統制可能に

(Bloomberg News 2025/8/8)

ロシアのプーチン大統領が望むインターネット像が、これまでになく実現に近づいている。ロシア政府は7月、政府が支配するソーシャルネットワーク企業VKを国家公認のメッセージサービスに指定したと発表した。

その結果誕生したのが「Max」と呼ばれる多機能型アプリだ。ユーザーはメッセージのやり取りや財務管理、行政サービスの利用、さらには音楽フェスの行列回避まで可能とされている。

プーチン氏は7月16日、ロシアが非友好国と見なす国のソフトウエアや通信サービスについて、新たな規制策定を指示。その2日後、下院情報技術(IT)委員会のアントン・ゴレルキン第一副委員長は、国内で最も人気のあるメタ・プラットフォームズのメッセージアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」も対象に含まれる「公算が大きい」と述べた。

ロシアは近年、外国のテクノロジー企業やインフラへの依存からの脱却を意味する「デジタル主権」への関心をますます強めている。プーチン氏の最終目標は、あらゆるオンライン体験が万能アプリを通じて提供され、政府がネット上の活動を強力に監視・統制できる中国型モデルの実現だ。

ロシア政府報道官とVKの広報担当者はコメント要請に応じなかった。

国民監視を強化

欧州政策分析センター(CEPA)のイリーナ・ボロガン上級研究員は、ロシア政府が国営ガス会社ガスプロムや他の政府系株主を通じてVKを支配しているため、Maxを利用して国民のネット活動全般を広く統制できるようになると指摘する。

デジタル権利擁護団体ロスコムスヴォボーダによれば、Maxには送受信されるデータに第三者がアクセスできないようにするエンドツーエンド暗号化(E2EE)の機能がなく、当局による監視が容易だ。

ボロガン氏は、「プーチン氏の基本方針は、全てを管理下に置くということで一貫している」とし、Maxの機能が強化されれば「電子警察官」になると語る。

2022年のウクライナへの全面侵攻以降、ロシア政府は統制しにくいサービスへの圧力を一層強めている。フェイスブックやインスタグラム、X(旧ツイッター)など米企業が所有するSNSを禁止。依然として広く利用されているユーチューブに対しても、アクセスを徐々に制限している。また、ネットの遮断頻度も上げている。

ロスコムスヴォボーダによると、当局はネット全体を停止せずに特定のアプリのみを遮断する手法の実証実験も実施している。ユーザーのネット活動を隠し、閲覧が禁じられているサイトへのアクセスを可能にする仮想専用線(VPN)の多くも禁止された。下院は最近、国家が「過激主義」と分類した情報を検索しただけでも罰金を科す法律を可決した。LGBTQ関連コンテンツも違法化され、戦争への反対意見を少し表明しただけでも長期の禁錮刑が科されるようになった。

ガスプロムなどが出資

VK傘下のサービスへネット利用を誘導することで、政府はさらに統制力を強化できる。VKの議決権付き株式の過半数を保有するMFテクノロジーズは、プーチン氏の「個人的なバンカー」とも呼ばれる富豪ユーリー・コワルチュク氏が出資する保険会社ソガスと、ガスプロムが経営権を握る。

VKのウラジーミル・キリエンコ最高経営責任者(CEO)は、プーチン氏の有力側近の息子だ。

プーチン氏自身はインターネットを使わないとしており、大統領として最初の2期ではテレビ報道統制を重視した。だが11年に方針転換が始まった。同年には、議会選を巡る不正疑惑や、首相を4年務めたプーチン氏が大統領選再出馬を決めたことへの反発から、抗議デモが起こり、その多くがフェイスブックやVKなどネット上で組織された。当時、VKを率いていたのは、のちに通信アプリ「テレグラム」を創設したリバタリアン(自由至上主義者)のパベル・ドゥーロフ氏だった。

その後ロシア政府はウェブサイト遮断に向けた規制強化に動き、テクノロジー企業に対しロシア国内でユーザーデータを保管するよう求めた。ドゥーロフ氏はウクライナ人ユーザーの個人情報提供を拒んだだめ、14年にVK株を手放さざるを得なかったと主張している。

19年にはインターネット検閲を可能にする法律が制定され、ロシアをネットから完全に遮断できる技術の試験運用が始まった。ウクライナ侵攻開始以降、この動きはさらに加速し、国産の技術プラットフォームを政府が間接的にコントロールする体制が構築された。

国民の間では、ユーチューブやウィキペディアに代わる自国サービスへの移行が進んでいる。昨年には、VKの主力SNS「VKontakte」が月間ユーザー数でユーチューブを超えた。

破壊する取り組み

ただ、政府の支援があっても、Maxが競合サービスに取って代わるには時間がかかると、ロスコムスヴォボーダの創設者サルキス・ダルビニャン氏はみている。

「今後数年でロシア人はMaxをダウンロードするかもしれないが、主要なメッセンジャーとしては利用せず、最初は行政サービスを利用する便利な手段として機能するだろう」と語る。

ベルリンのカーネギー・ロシア・ユーラシア・センターに所属する政治学者エカテリーナ・シュリマン氏はMax開発推進について「国家のインターネットを構築する試みではなく、既に存在するものを破壊する取り組みだ」と分析している。

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