渡島管内松前町の松前城資料館の元館長久保泰さん(75)が、松前藩家臣の出自や経歴をまとめた「松前藩家臣名簿」を自費出版した。足かけ15年で完成させた労作。今でも先祖の足跡をたどりに来町する子孫が少なくない中、専門家は「松前藩の家臣を初めて体系的にまとめた書籍。子孫が先祖を探しやすくなる」と評価している。(北海道新聞2022/2/3)
名簿は江戸時代の1604年(慶長9年)に成立した松前藩の家臣のうち、史料に根拠が残る5344人分を五十音順にまとめた。1789年(寛政元年)以降の家臣はほぼすべてを網羅している。家老から足軽までの階級、本家や分家の系統、関わった歴史上の出来事などを記した。
アイヌ民族の指導者の肖像画「夷酋(いしゅう)列像」の作者として知られる画人で家老の蠣崎波響(はきょう)(本名・蠣崎廣年)や、波響の孫で、1854年(安政元年)に米海軍提督ペリーが箱館に来航した時の応接使だった松前勘解由(かげゆ)ら著名な家臣は詳細に記載した。
久保さんは「足軽から家老手前まで出世した家臣もおり、家柄だけでなく、能力主義も取り入れて藩を機能させていたことが家臣の経歴を調べて分かった」と語る。道教大函館校の佐々木馨名誉教授(75)=日本史学=も「家臣団の本家や分家の系統が整理され、藩の内部構造が分かる」と評価した。
久保さんは1974年から町教委に勤務し、町史編さんに携わった。町教委時代は遠方から自らの家系を調べに来る家臣の子孫に「十分に協力することができなかった」との思いもあった。役場を定年退職して松前城資料館館長に就いた2007年から名簿の編さんを始め、20年の同館退職を経て昨年12月に完成させた。特定の家臣の経歴を詳説する続編の出版も計画中だ。
家臣名簿はA4判、316ページ。100部印刷し、55冊は道内の主要図書館などに寄贈した。取り置き分などを除いた残り38冊は希望する子孫や研究者らに5千円(送料別)で販売する。問い合わせは函館市の三和印刷(電)0138・45・0845へ。(久保吉史)
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