千島列島海域からイガイが忽然と消えた 海洋生物学科学センターが調査 10種の新しい多毛類も発見

千島列島

ロシア科学アカデミー極東支部のジルムンスキー国立海洋生物学科学センター(NSCMB FEB RAS)は、クリル諸島(北方四島を含む千島列島)海域で行った海洋生態系に関する包括的な調査で、少なくとも10種の新しい多毛類(海洋虫)を発見した。

また、今回の調査では、クリル諸島のいたるところに大量にいたイガイ類が姿を消してたことが分かった。専門家は「現時点で理由は不明だが、今後の研究で特に注目に値することは間違いない」と語った。

同研究所は、調査船「アカデミック・オパリン」でクリル諸島への遠征を行った。同研究所の職員 22 名のほか、ロシア科学アカデミー海洋研究所のエリャコフ記念太平洋生物有機化学研究所の職員 8 名と、モスクワ国立大学のロモノソフ記念研究所の職員 1 名が参加した。

科学者たちは、オネコタン(温禰古丹島)、シムシル(新知島)、ウルップ(得撫島)、イトゥルップ(択捉島)、クナシル(国後島)、および小クリル列島(シコタン=色丹島、ユリ=勇留島)を調査し、35の観測地点で、海洋水棲生物、底質、海水、および水深669メートルにあった人為的廃棄物を含む131のサンプルを採取した。

同研究所の上級研究員、ヴァシリー・ラダシェフスキー氏は「海底に生息する多くの生物群のうちの 1 つが多毛類です。シムシル島(新知島)の保護された緩やかな傾斜の沿岸域では、1 平方メートルあたり最大 100 万匹の密度で生息する多毛類の広大な生息地が見つかりました。南クリル諸島(北方四島)の沿岸域と閉鎖された湾の浅瀬では、同じ密度の多毛類の別の種の生息地が見つかりました。クリル諸島の動物相に関する以前の研究にもかかわらず、私たちは少なくとも 10 種類の新しい多毛類を発見し、そのサンプルはその後の形態学的および分子学的分析のために記録されました」と述べた。さらに、微小無脊椎動物の新しい種もいくつか発見したと報告した。

忽然と消えたイガイ類

今回の調査で、クリル諸島のいたるところに大量にいたイガイ類が消えていたことが分かった。

ロシア科学アカデミー生理学研究所の上級研究員であるヴィクトル・カヴン氏は「1980年代半ば、クリル諸島のほとんどの地域でイガイのサンプルを採取し、沿岸海域の金属含有量をモニタリングするための基礎とした。今回の調査では、この種の二枚貝のサンプルを採取し、組織中の重金属含有量を長期にわたって比較評価する予定だった。しかし、潜水調査したほとんどの地点で、この種の軟体動物はおろか、その殻さえも発見されなかった」と述べた。

イガイ類は少なくとも3年前にこの海域から姿を消したと付け加えた。「この種の軟体動物が従来の生息地からこのように姿を消したことは、その理由が現時点では不明であるが、今後の研究で特に注目に値することは間違いない」とカヴン氏は指摘した。

二枚貝は、分布範囲が広く、定住生活で、濾過摂食し、重金属などの汚染物質を生体内に蓄積する能力があるため、バイオモニタリングによく使用される。

同研究所は、クリル諸島の海域には大きな自然と資源の可能性があると付け加えた。アジア大陸とアメリカ大陸の海洋動物相の間の移動がそこで起きている。寒流と暖流の影響、諸島の地理的位置と地形、活発な火山活動、その他多くの要因により、ここの海洋生物の生息環境は非常に多様である。このため、クリル諸島では魚、無脊椎動物、藻類の漁業が活発に行われており、これまで科学に知られていなかった新種が発見される可能性も高い。(タス通信2024/9/27)

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