国後島にサーフィンの波

国後島の話題
太平洋の日の出とサーフィン。2023年3月(アンドレイ・キセレフ撮影)

国後島のサーフィンの歴史は2020年9月にロシア本土から最初のサーファーが視察のために島に到着したことから始まった。ダニイル・フィリノフ氏(現在は沿海地方サーフィン連盟会長)とロシアサーフィン連盟代表のタチアナ・ドゥドヴァ氏をリーダーとするウラジオストクのサーファーたちが国後島に有望なサーフ・スポット発見し、本土から国後島への物流網を最初に構築した(大型スポーツ用具であるサーフボードの輸送には独特のニュアンスがある)。

太平洋沿岸とオホーツク海に面した大クリル海嶺の最南端に位置するこの島は、ロシア屈指のサーフィンスポットだ。一年を通して様々なコンディションでサーフィンを楽しめるだけでなく、初心者でも安心してサーフィンを始められる。世界でも類を見ない様々なタイプの波が楽しめる国後島。何より、主要スポット(サーフィンスポット)がすべて村内にあることだ。ほとんどは車で20~30分ほどで、徒歩で行くことも可能だ。スポットまで数時間かかるロシアの他の地域と比べて、国後島の大きな魅力となっている。

雨や雪、風や霧など天候は様々だ。水温は8月と9月には18度まで上がり、10月中旬までこの温度が続く。たとえ3~4mm厚のウェットスーツを着ても、寒い。しかし、国後島の質の高い波こそが必要なものであり、そのために遠くからやって来るのだ。

国後島におけるサーフィンの発展において重要な節目となったのは、ロシアチームによる初のトレーニングキャンプだった。 2021年4月1日、ロシアサーフィン連盟は、ポルトガル人コーチのペドロ・バルブド氏の指導の下、ロシアサーフィン代表チームのための初の公式トレーニングイベントをロシアで開催した。新型コロナウイルス感染症の流行により、ロシア選手たちは例年通りポルトガルなどへ渡航し、世界大会の準備をすることができなかった。すべての国境が閉鎖されたため、ロシア国内で代替地を探さざるを得ず、国後島が最適な選択となった。選手たちはスポットの多さ、波の質に満足し、国後島にはサーフィンの発展に大きな可能性があると認識した。

2021年8月、ユジノクリリスク(古釜布)近郊のゴロヴニンスカヤ湾(古釜布湾)にあるオルビタ・スポットで、初のサーフィン教室と講習会が開かれた。講師は代表チーム監督のペドロ・バルブド氏が務めた。ロシア屈指のサーフィンインストラクターであり、様々なレベルの大会で優勝経験を持つマキシム・フォミン氏が協力した。

2022年には、国後島に南クリル地区サーフィン連盟が設立され、サーフィンの人気は高まり始めた。アマチュアからプロのサーファーまで、多くのサーファーが国後島に大きな関心を持って訪れるようになった。

2022年8月、マクシム・フォミンは国後島で再びサーフィン教室を開催した。講義と実技レッスンの参加者数は、前年と比べて著しく増加した。地元住民の間でも、サーフィンというスポーツとレクリエーションへの関心が高まった。フォミンの教え子である地元の生徒たちは、今では一年中波に乗り、サーフィンの普及活動に携わっている。

2023年には、国後サーフクラブが設立された。2024年8月には、クラブメンバーが、再び島を訪れたペドロ・バルブド氏による「サーフィントレーナー初級」集中コースを修了した。

国後島へのサーフィンツアーは、近年恒例になりつつある。毎年、マキシム・フォミン氏をはじめとするパートナーインストラクターが、サーフキャンプ、島民との交流会、そして実技講習を開催している。子供向けの講習は無料。黒海、カリーニングラード、モスクワ、ウラジオストク、サハリン、カムチャッカ半島などからサーファーやインストラクターが国後島を訪れるようになっている。

2023年9月、ロシアサーフィン遠征隊が色丹島でサーフスポットを発見した。色丹島のサーフスポットは、国後島よりもアクセスが難しく岩だらけの場所にある。2024年8月にき国後サーフクラブのメンバー2人が択捉島を訪れ、1ヶ月かけてカサトカ湾(単冠湾)を調査した。

国後島におけるサーフィンの発展における2つ目の重要なマイルストーンは、2024年8月にペドロ・バルブド監督のもと、ロシア連邦ジュニアチームのトレーニングキャンプが開催されたことだ。若い選手たちは、メインスポット「オルビタ」の波とコンディションに非常に満足し、2025年夏に国後島で再びジュニアトレーニングキャンプが開催されることになった。

地元のサーファーたちは、トドやゴマフアザラシなど海洋哺乳類との遭遇状況をクリル自然保護区に定期的に報告している。同自然保護区にも熱心なサーファーである職員が2人いる。

海洋と海岸の保護は、国後島だけでなく、すべてのサーフ・スポットにとって不可欠だ。サーフィンを始めると、海に浮かぶビニール袋やペットボトル、ビーチがゴミで覆われていることに気づく。すべてのサーファーは、遅かれ早かれ環境問題について考えるようになる。国後島サーフクラブのメンバーは、定期的にビーチの清掃に取り組んでいる。

国後島を訪れるサーファーの数は年々増加している。島の沿岸海域では一年中サーフィンが可能なため、冬にもサーファーが訪れるようになるだう。新しいサーフスクールやキャンプ場もオープンする予定だ。

今後、国後島では様々なレベルの競技会、選手権、海洋フェスティバルが開催される可能性がある。これらは、人間と海の一体化、そして人間と自然の正しく調和のとれた関係の重要性への理解を深めることに貢献するだろう。(クリル自然保護区ウエブサイト2025/6/6)

タイトルとURLをコピーしました