北方領土・国後島のヒグマはいつ眠り、いつ起きるのか。国後島のクリル自然保護区がヒグマの冬眠について解説した。
冬眠とはより正確に言うと、活動が低下し、代謝が遅くなる状態。ヒグマは冬の到来とともに、脂肪を蓄積して冬眠に入る。心拍数は遅くなり、呼吸は抑制され、体温も低下する(約6℃低下して29〜31℃になる)。これにより、エネルギー消費を大幅に削減でき、食糧不足と寒さの厳しい時期に備えて省エネモードに切り替えることができる。

国後島のヒグマは魚、木の実、さまざまな植物性食品、海の糞を腹いっぱいに食べて冬眠に入る。その年の気温、積雪によって異なるが新年前、あるいはそれより少し後に眠りにつく。最初に眠るのはメスで、成体のオスは雪が降り始めるまで待ってから巣穴に向かう。平均して、国後島のヒグマは1月中旬までにすべて冬眠に入る。
冬眠中でもヒグマは敏感だ。巣穴から出ることなく目を覚ますこともある。このような定期的な覚醒期間は、体の位置を変えるために必要で、国後島のヒグマの眠りはそれほど深くない。
1月から2月にかけて、メスは冬眠中の巣穴で1~3頭(最大5頭)の子熊を産む。体重は500~600グラム、体長は約23センチで、短くまばらな毛皮に覆われ、まだ完全に目が見えない。巣穴では、母親の乳だけを飲む。


巣穴は通常、大きな木の根の下や森林の倒木の近くに掘られている。クリル自然保護区の職員は、チャチャ火山(爺爺岳)やゴロヴニン火山(泊山)、川の上流、オークや白樺の根の下など、島のさまざまな場所でヒグマの巣穴を発見している。巣穴は風や水漏れを防ぐ「屋根」のある一種のシェルターだ。保護区のアレクサンドル・キスレイコ所長の長年の観察によると、国後島のヒグマは巣穴の入り口を北西に向け、できるだけ早く雪で覆われるようにすることを好むという。また、ササや落ち葉で巣穴を覆うこともある。



多くのヒグマにとっては約 45 日間の冬眠で十分だか、一般的に、年をとるほど、早く眠りにつき、より長く眠る。また、より経験豊富な個体、主にオスは山に行き、雪解けの影響を受けにくい場所に巣穴を作って冬を越す。
冬眠から最初に目覚めるのはオホーツク海岸に近い島の南部で眠っていたヒグマで3月末ころ。4月中旬には大人のヒグマが起き上がり、最後に巣穴から出るのは子連れの母クマだ。

ヒグマが巣穴から出た後、正気に戻るまでに約1週間半かかる。長い冬眠中に、通常の生理機能が乱れていたためだ。トイレに行かず、水も飲まず、食べなかった。巣穴から出たヒグマは、まず早春の植物や根を食べ、ネズミの「巣」を掘り起こす。国後島のヒグマは幸運だ。春には海岸沿いで冬の海洋生物の大きな「餌」の残骸(死んだ海洋哺乳類や鳥、魚、海洋無脊椎動物の死骸)が見つかる可能性が高いからだ。
冬が明けると、ヒグマは体重がいくらか減り(最大30%)、毛が抜ける。春に目覚めたヒグマが特に危険で、行く手を阻むものすべてを食べようとするというのは真実ではない。秋に十分に太り、脂肪の蓄えを残している個体には当てはまらない。春になると、ヒグマはすぐに植物食に切り替えるが、島には餌になる植物がたくさんある。
国後島のヒグマは人間に対して非常に穏やかであるが、危険な大型捕食動物であることを覚えておく必要がある。冬の森では、大きな音を立てたり、爆竹を鳴らしたりしてはいけない。雪の吹き溜まりの小さな穴のまわりに黄色い霜が降りていれば、目の前に巣穴があるということだ。この穴は「通気孔」で、この場合は、眠りが浅い森の主を邪魔しないように、すぐにその場所を離れる必要がある。(sakh.online 2024/12/24)
