国後島のクリル自然保護区の職員が国後島南部のベスロフスキー半島(ケラムイ崎)沿岸の定期調査中、珍しいアザラシの「吸気穴」を発見した。氷に開いた整然とした丸い穴は、海洋哺乳類にとって「生命の窓」となり、冬季生存戦略の一部となっている。
南クリル諸島(北方四島)に生息するゼニガタアザラシ(Phoca vitulina stejnegeri)とゴマフアザラシ(Phoca largha)の冬の生活についてはほとんど分かっていない。ベスロフスキー半島での観察は、警戒心の強い動物たちの生活に新たな光を当てている。

冬季、アザラシにとって空気は非常に重要だ。彼らは海面を覆った薄い氷を頭で割ったり、前ひれの爪で引っ掻いたりして穴を開ける。氷が発達して一枚岩の殻と化してしまうと、新たな穴を開けることはできなくなるため、アザラシは既存の「吸気穴」を常に監視し、凍結を防いでいる。
ゼニガタアザラシとゴマフアザラシは、最大15分間水中に留まることができる。その間、氷の下で狩りをし、移動する。こうした能力にもかかわらず、哺乳類である以上空気を必要とする。アザラシにとって「吸気穴」は生死を分ける「生命の窓」なのだ。
流氷を追って長距離を移動することが多いタテゴトアザラシとは異なり、イズメナ湾(泊湾)のゼニガタアザラシとゴマフアザラシはより定住性が高く、特定の沿岸地域に限定された生活を送っている。そのため、生息地が著しく限られており、環境の変化や人為的な影響に対して脆弱だ。

クリル自然保護区は、島の住民と観光客に対し、氷に「吸気穴」を見つけた場合は近づかないよう呼びかけている。アザラシは、「吸気穴」付近での動きを死の脅威と認識する。もしアザラシが水中で酸素を使い果たし、「吸気穴」で「捕食者」(この場合は好奇心旺盛な人間)が待ち構えていたら、水面に上がることを拒否するかもしれない。息を一つ失うだけでも、冬には貴重なエネルギーを莫大に失うことになる。たとえ別の「吸気穴」を見つけることが出来たとしても、それは非常に大きなストレスとなる。

アザラシは陸と海の二つの世界の境界に生息する驚くべき生き物である。哺乳類でありながら、水生環境をほぼ完全に征服することに成功した一方で、陸地では極めて脆弱な訪問者である。彼らの幸福は、陸上と水中の生息地の清潔さと静けさにかかっている。 (sakh.online 2026/1/19)




