サハリンのホルムスク市(旧真岡)で、年々危険性が増して街の景観を損なっていた旧王子製紙真岡工場の解体作業が始まった。ホルムスク地区のドミトリー・リュブチノフ市長は「1万472平方メートルもある危険な構造物は、単なる数字ではありません。これは大規模で複雑な施設であり、年々危険性が増し、街の景観を損なっています。住民からこの問題について相談を受けており、私も彼らの懸念を共有します。このような構造物は市域内にあってはならないのです」と述べた。

100年以上前に日本人によって建設されたこの工場は、長い間放置されていた。老朽化した建物の解体費用は、ヴァレリー・リマレンコ知事の支援を受け、サハリン州政府から拠出された。知事は、廃墟となった建物の解体の必要性を繰り返し訴えてきた地元住民の取り組みを支持した。

工場は市の中心部の工業地帯にあり、ホルムスク市内の多くの場所から容易に見ることができる。州当局は一貫してこの決定を支持し、調査を実施し、交渉を行い、必要な承認と資金をすべて確保した。

請負業者であるSnosStroyInvestは既に作業を開始している。解体作業はすべての安全要件を遵守して段階的に行われる。リュブチノフ市長は「老朽化した建物を撤去するだけでなく、その地域をさらなる開発のために解放することが重要です」と付け加えた。(kholmsk.gosuslugi.ru及びastv.ru 2026/2/25)


廃墟と化した旧王子製紙真岡工場 裁判所が市に立ち入り禁止措置を命じる(askh online 2023/3/27)
サハリン地方裁判所は、廃墟となっているホルムスク(旧真岡)市の旧王子製紙真岡工場への立ち入りを禁止するよう市当局に命じる判決を下した。工場は1919年に建てられ、現在は1925年と1965年に建てられた建物と民間防衛施設が残っているが、所有していた企業は2005年に清算された。廃墟と化した建物は10代の若者の遊び場となっており、しばしば事故も起きていた。同地区の検察当局は市に対して、住民の安全のため旧製紙工場敷地への立ち入りを禁止する措置を取るよう求める訴訟を起こし、一審で勝訴。これを不服とした市が控訴していたが、裁判所は市の不作為は違法として、所有者がいない建物を登録した上で、立ち入りを禁止する対策を講じるよう命じた。
企画特集【サハリンの建築遺産】(下)旧王子製紙真岡工場(朝日新聞2016/1/15)
■産業の盛衰、語る廃墟
窓の跡なのだろうか。壁の至るところに穴があいたようで、まさに「廃虚」という言葉がぴったりだ。
間宮海峡に面したホルムスク(旧真岡)の中心部にほど近い旧王子製紙真岡工場。築80年の今も現役で働くユジノサハリンスクの菓子工場とは対照的だ。
許可を得て中に入った。機械類は見当たらず、壁や柱、天井はぼろぼろ。へりが欠けた階段を上がり、恐る恐る下をのぞくと床にがれきが散乱し、崩れた壁から外を見渡すと屋根のない建物が並んでいた。
長年サハリンの史跡や自然などを記録している写真家の斉藤正良さん(60)=稚内市=は、昨年初めて工場の内部を撮影した。「人の手で造ったものが朽ちていくさまは写真の題材になる」と思う一方、「樺太時代の産業の象徴」として保存を願う。
旧王子製紙真岡工場は1919(大正8)年に樺太工業が操業を始め、33(昭和8)年に同社を吸収合併した王子製紙に受け継がれた。戦後はソ連の製紙工場に使われたが、90年代半ばに操業を停止した。
豊富な森林資源に恵まれたサハリンでは製紙業が隆盛を誇り、日本領だった時には真岡を含めて計9カ所の製紙工場があった。
サハリンの日本期建築物に詳しい北海道大スラブ・ユーラシア研究センターの井澗(いたに)裕研究員(44)は、製紙工場跡について「産業遺産としての価値が高く、20世紀のサハリンの歴史を語る上でも不可欠の文化遺産」と指摘する。
井澗さんやロシアの研究者の調査によると、サハリンには現在、日本期の建造物が少なくとも120件ほど残っているとされる。旧樺太庁博物館(現・郷土博物館)や旧北海道拓殖銀行豊原支店(現・美術館)など保存・活用例はあるが、多くは放置されているのが実態だ。
■調査保存へ日・ロ協力の機運も
そんな中、観光への活用を含め、建築遺産を見つめ直す取り組みが出ている。
今回同行したモニターツアーもその一つだ。サハリンと宗谷、上川、留萌の道北3地域の観光交流を促進しようと、道宗谷総合振興局が昨年12月に実施。製糖・製紙工場や銀行といった日本領時代の建物を見て回った。食の体験や鉄道の旅なども含めてサハリンの観光資源を掘り起こし、道北観光とセットにしたモデルツアー作りもめざす。
今月下旬にはサハリンのマスコミ関係者らを道北に招くモニターツアーも企画。3月までに日本人向けサハリン情報、ロシア人向け道北情報を網羅したホームページを作り、双方向の観光に生かす考えだ。
日ロ間では、協力してサハリンの建築遺産を調査しようとする動きもあるという。井澗さんは「製紙工場に限らず、大泊(現コルサコフ)無線電信局など歴史的に価値が高い建造物がある。共同プロジェクトで保存する意味は大きい」と、歴史的な建造物を守る機運の高まりに期待している。


