ガスプロム・ヘリウム・サービスは、ロセティ社の色丹島におけるモバイル・ガスタービン発電所(MGTPP)エネルギープロジェクト向けに、最初のLNGを出荷したが、クリル諸島(北方四島を含む千島列島)へのさらなるLNG供給の実現は依然として不透明である。
ガスプロム・ヘリウム・サービスは、クリル諸島への電力供給開発を目的としたロセティ社のモバイル・ガスタービン発電所(MGTPP)プロジェクト向けに、最初の液化天然ガス(LNG)を出荷した。ガスプロム・ヘリウム・サービスは2025年12月17日に発表した。
千島列島向けLNG
ガスプロム・ヘリウム・サービスは、千島列島への自立的なガス供給プロジェクトの一環として、極東にある自社の小規模LNG生産設備を用いてLNGを生産している。色丹島への最初のLNGは、沿海地方にある同社のLNGコンプレックスから出荷された。
LNGは、沿海地方のLNGコンプレックスから国産のタンクコンテナ(RMレール社製UM T 75)に積み込まれ、その後、ロセティ・モバイル・ガスタービン・パワープラント社によって海上輸送のために港に運ばれる。
LNGタンクコンテナは海上輸送で色丹島に輸送され、そこでロシア製の設備を用いて受入れ、貯蔵、再ガス化される。
このLNGは、ロシア初の国産デュアル燃料発電所であるマロクリルスカヤ・ガス・ディーゼル発電所(出力5.3MW)の設備試験に使用される。第一段階では、このLNGを用いて1.1MWのガス・ディーゼル発電機の試験を行う。ロセティ・モバイル・ガスタービン発電所は、統合発電プロジェクトを実施するロセティの企業。ロセティはこれまでに、1.1GWの25件以上の主要プロジェクトを完了している。
同社は、国後島、色丹島、択捉島における電力供給保証会社であり、同諸島の電力網の運用を担っている。ロシア連邦大統領の命令により、サハリン州政府とロシアエネルギー省が策定した2022~2026年および2035年までの島嶼地域におけるロードマップおよび包括的電力供給計画に基づき、島嶼地域の電力システムの近代化が進められている。
2023年には、ロセティとサハリン州の間で協力協定が締結され、色丹島、国後島、択捉島におけるガス・ディーゼル発電所(GDP)の建設を含む、いくつかの新規プロジェクトの実施が規定された。
色丹島では、マロクリルスカヤGDPが建設中で、出力は5.3MWで、6.4MWまで増強可能。主要な建設段階には、1.1MWガス・ディーゼル発電機3基(コロメンスキー・ザヴォード社製の新設備)、1MWディーゼル発電機2基(既存施設からの移設)、LNG受入・貯蔵・再ガス化システムなどの設置が含まれている。稼働開始は2026年10月を予定している。

不透明なLNG供給体制
ガスプロム・ヘリウム・サービスは、極低温技術を用いたプロジェクトの実施においてガスプロムの認定を受けた会社。これには、沿海地方のヘリウム・ハブが含まれている。このハブを通じて、アムール川ガス処理プラントで生産された液化ヘリウムは、沿海地方の港湾に輸送され、消費者に出荷される。同社はまた、KAMAZ-5490 NEO長距離LNGトラックの燃料供給、市場販売(輸出を含む)、自律ガス化など、小規模LNGプロジェクトも実施している。
ガスプロム・ヘリウム・サービスは現在、極東で2つの小規模LNG施設を運営している。沿海地方のヘリウム・ハブにある0.4トン/時(年間0.35千トン)のLNG施設と、アムール川流域のスヴォボドネンスキー地区にある1.5トン/時(年間12.6千トン)のLNG施設。ヴォルゴグラード州ビコフスキー地区では、1時間あたり1.5トン(年間1万2,600トン)のLNG生産施設が稼働を開始した。ベラルーシでは、グレートストーン・チャイナ・ベラルーシ工業団地でLNGプロジェクトが進行中だ。
一方、色丹島、国後島、択捉島のガスタービン発電所は、合計で年間3万5,000トン以上のLNGを消費すると予想されており、これはガスプロム・ヘリウム・サービスの極東LNG施設の生産能力を上回っている。
ガスプロムは、千島列島のガスタービン発電所にLNGを供給するため、サハリン島ポロナイスク、ダルネエ村にLNGプラントを建設する計画を立てていた。年間4万トンの生産能力を見込むこのLNGプラントは、小規模LNGに特化したガスプロムの別の子会社であるガスプロムLNGテクノロジーズによって運営されているが、プロジェクトの状況は現在不明となっている。
LNGガス化が計画されているカムチャツカ地方と同様に、クリル諸島向けにも大規模プロジェクトからのLNGが供給される可能性がある。カムチャツカ半島のLNG供給源としてサハリン2プロジェクトが選定されていたが、物流計画の最終承認やLNG供給契約の締結が遅れている。ロシア政府は2024年11月、ノバテクのアークティックLNG2プロジェクトからのLNGをカムチャッツカ半島のガス化に利用する可能性について協議した。しかし、カムチャツカ半島のLNG需要は年間45万トンとはるかに高く、その受入・貯蔵・再ガス化のための大規模なインフラが別途整備されている。(neftegaz.ru 2025/12/17)

