2026年6月18日、モスクワ国立大学(MSU)動物学博物館の鳥類学者チームが、国後島での調査を終えた。この調査は、クリル諸島(北方四島を含む千島列島)の鳥類相を研究する長期プロジェクトの一環として、クリル自然保護区との科学協力協定に基づいて実施された。
目的と成果
今回の遠征の主な目的は、国後島の陸生鳥類(主に森林に生息する種)を対象とした形態学的・遺伝学的比較研究のための資料を収集することだった。その狙いは、新たな亜種の記載の可能性を探り、既存の型の既知の分布域をより正確に把握することにあった。
国後島での調査は、2004年に開始されたクリル諸島に関する長期研究の最終段階(第8次調査)にあたるもの。これまでの遠征では、シュムシュ島(占守島)から択捉島に至る島々で調査が行われてきた。調査隊リーダーのエフゲニー・コブリク氏は「私たちの研究により、クリル諸島の鳥類相が持つ地理的な独自性は、従来考えられていたよりもはるかに大きいことが明らかになりました。ここで言うのは新しい鳥類『種』ではなく、既存の種の中における新しい地理的な『型』のことです」と説明する。
研究者たちが最も関心を寄せたのは、珍しい種ではなく、むしろ一般的で、その地域に定住する森林性の鳥類だった。主な目的は、国後島におけるこれらの鳥類の個体群が、近隣の択捉島や北海道の個体群とどのように異なるかを明らかにすることだ。ヤロスラフ・レドキン氏は「まず私たちが注目したのは、一年を通してその土地に留まって生活する『留鳥』です。具体的には、シジュウカラの仲間、ゴジュウカラ、キバシリ、キクイタダキなどが含まれます。また、クリル諸島で固有の個体群を形成している可能性のある種も対象としました。さらに、鳥類の個体群密度を推定するために、トランセクト法による調査も実施しました。多種多様な生息環境において計15〜16回の調査を行い、目視による確認と、さえずるオスの記録の両方を行いました。今後は、専門的な手法を用いてデータを処理し、個体群密度を算出する予定です」と語った。

亜種の識別:国後島が示唆するロシア本土との関連性
調査の重要な目的の一つは、様々な種の地理的変異を評価し、新たな島嶼個体群を記載する上で国後島が持つ科学的価値を明らかにすること。これらの知見は、島嶼部だけでなく本土における鳥類相の形成メカニズムを解明する助けとなる。その地理的位置から、国後島の動物相は日本とサハリンの双方の鳥類個体群から影響を受けている可能性がある。国後島は最南端の比較基準点としての役割を果たしており、より北方に位置する島々やロシア極東本土との比較を可能にする。
国後島では、鳥類の新たな亜種が確認される可能性がある。そのため、研究者らは主要な種(主に森林性の鳥類)を捕獲し、計測を行った。採取された標本は博物館に移され、遺伝子解析を含むさらなる研究が行われる。そこでは、国後島のサンプルと、サハリン、沿海地方、カムチャツカなどロシアの他地域の既存の博物館所蔵標本との比較検討が行われる予定だ。
新たな知見と予期せぬ発見
野外調査において、稀な迷鳥の存在が記録された。以下の種は、国後島において、さらにはクリル諸島全体においても初めて記録されたものだ。
キマユムシクイ(サハリンからの迷鳥)。サハリン島や東アジア本土では比較的よく見られる種。国後島での記録はこれまでなかったが、今回確認された個体は繁殖地へ向かう途中の渡り個体であった可能性が高いと考えられる。
ジュウイチ(近隣の北海道からサイクロンによって運ばれてきた可能性が高い)。
サンカノゴイ(またはシュレンクサンカノゴイ)。日本列島、サハリン、アムール地方、中国東部に生息する、姿を見つけにくいサギの一種。

迷鳥として、サンショウクイ、ツバメチドリ、そしてセイタカシギも記録されたが、期待外れに終わったこともあった。研究者たちは特にノゴマ(クリル諸島やカムチャツカの他の地域では一般的な種)を探していたが、4週間にわたる探索にもかかわらず、その姿を確認することはできなかった。
研究者たちは、国後島でアオバトが頻繁に目撃されることに驚いた。「これほど広く生息しているとは予想外でした……多くの場所で、例えばキジバトよりも一般的であるようにさえ感じられます」とエフゲニー・コブリク氏は語る。しかし、アオバトはつる植物の茂みの中に隠れてひっそりと営巣するため、島内でその巣はまだ発見されていない。

科学的価値と今後の展望
収集された資料は、分類学的な再検討や、いくつかの新亜種の記載(新亜種としての定義・発表)を可能にするものだ。例えば、国後島のコヨシキリについては、形態的特徴に基づきすでに亜種の提案がなされていたが、遺伝的な裏付けが欠けていた。今回の調査でその確認が可能になる。他の種、特にムシクイ類についても興味深い結果が期待されている。国後島で収集されたサハリンムシクイの一連の個体群と、サハリン島の標本とを比較することで、この種を2つの亜種に分類できる可能性が高いと考えられる。エフゲニー・コブリク氏は「国後島での収集資料によって、サハリンムシクイの新亜種を記載することが可能になります。これにより、この種は2つの亜種で構成されることになります」と話す。
モスクワへの帰還後、科学者たちは、収集した調査資料や標本の整理、標本の形態解析、遺伝データの解釈といった、綿密な室内作業に取り組むことになる。(クリル自然保護区ウエブサイト2026/7/8)




