9月6日から15日にかけて、ウラジオストクの藻類学調査隊が国後島で大型藻類に関する調査を行った。
調査に参加したのは藻類学者のアンナ・スクリプトソワ氏(ロシア科学アカデミー極東支部A.V.ジルムンスキー国立海洋生物学科学センター・独立栄養生物研究室長兼上級研究員)と、水圏生物学者のマキシム・アスタホフ氏(ロシア科学アカデミー極東支部東アジア陸上生物多様性連邦科学センター研究員)。2人は2016年、2018年、2022年にも実施している。

今回の作業は、「極東の海域における大型藻類の種組成と分布に関する研究」プロジェクトの一環として行われた。調査の目的は、紅藻植物門(Rhodophyta)、特にスギノリ目(Gigartinales:スギノリ科 Gigartinaceae)およびアマノリ属(Porphyra)の種組成と分布を見直すための藻類サンプルを採取することだった。また、褐藻綱(Phaeophyceae:カヤモノリ科 Scytosiphonaceae)やアオサ目(Ulvales)の緑藻類も調査対象に含まれていた。
研究チームは国後島に到着する前、択捉島のカサトカ湾(単冠湾)およびクリリスキー湾(紗那湾)で野外調査を行った。国後島では、嵐によって打ち上げられた海藻を調査するとともに、太平洋側の海岸(イリューシン川=チクニ川からルベジュニ川、および「悪魔の指」付近まで)や、オホーツク海側の海岸(ストルブチャティ岬=材木岩からクルーグルイ岬=ブニ崎の間)の潮間帯および潮下帯上部(水深2mまで)で標本を採集した。分子遺伝学的解析用のサンプルを採取したほか、その後の形態学的同定を円滑に進めるために、広範なハーバリウム標本(押し葉標本)も作成された。

国後島で大型藻類を採集するアンナ・スクリプトソワ氏
藻類の分類学の分野では、命名法や分類に関する多くの課題が蓄積している。こうした問題は特に紅藻類、具体的にはギガルティナ目=スギノリ目(Gigartinales)やアマノリ属(Porphyra)において顕著である。ロシア海域におけるこれらのグループの代表的な種については、これまで十分な研究が行われてこなかった。今回の遠征および過去数年の調査による予備的な結果から、特にカローフィリス属(Callophyllis)において、科学的に新種とされる種をいくつか記載する必要があることが示唆されている。A.V.スクリプトソワ氏は、これまでに国後島から藻類の新種を記載している。

千島の住民に「シー・ケール」という総称で最もよく知られている褐藻類、すなわちコンブ
しかし、新種の記載だけがこの遠征の目的ではない。クリル諸島の生物多様性や、近隣地域の植物相との関連性を理解するには、藻類に関する継続的な調査が不可欠である。独自の種と共有種の双方を記録することは、クリル諸島の植物相がいかにして形成されたかを理解する上で極めて重要だ。
課題となっているのは、極東の海域における藻類相の種組成や起源に関するこれまでのデータが、もっぱら形態的な同定に基づいていたという点だ。現在、同定の精度を高めるために分子遺伝学的手法が用いられているが、それにより、一見すると大西洋の種と共通しているように見えても、実際には太平洋にのみ生息する全く異なる属や種であることが明らかになっている。さらに、クリル諸島弧の地域にのみ生息する種も数多く存在する。加えて、遺伝的には明確に区別されるものの、形態的にはほとんど見分けがつかない「隠蔽種(クリプティック・スピーシーズ)」も多数発見されている。こうした種は世界中に数多く存在し、その遺伝的多様性は、生息環境の変化に対する海洋生態系の回復力を決定づける上で重要な役割を果たしている。

砂浜のマコンブ(国後島)
大気温暖化に伴う地球規模の変動に加え、この地域の海流も近年、その流路や水温を変化させている。この影響を特に受けているのが、温暖な対馬海流と、その分流である宗谷海流である。これらの海流は南からクリル諸島に接近し、国後島や択捉島のオホーツク海側の沿岸を洗っている。
地球温暖化は、特に沿岸域において、海洋生物群集内の植物相や種の生態学的役割に変化をもたらしており、クリル諸島の海洋生態系全体における構造的・機能的な大規模な再編を招いている。現在、世界的に暖水性の種が北上している。かつては稀だった南方系の藻類が南クリルで一般的になる一方で、寒冷な環境に適応した種の個体数、生物量、および分布範囲は徐々に減少している。
近年、コマンダー諸島やモネロン島では、コンブ属(Laminaria)の褐藻類の生物量が減少していることが記録されている。また、今回の藻類調査隊の参加者によって報告されたように、国後島でも藻類群集の構成に変化が見られる。全体として、クリル諸島の緯度帯ではコンブ藻場の減少傾向が現れている。これは連鎖的な影響を引き起こし、何百もの海洋生物から隠れ家や餌資源を奪うことになり、オホーツク海の生物生産性を低下させる恐れがある。

古釜布で植物標本に取り組むスクリプトソワさん
好奇心旺盛な読者のために、クリル諸島に見られる紅藻類について、人間による利用や生物群集における役割を紹介しよう。
ギガルティナ目(紅藻の一目)は世界で1,000種以上を数える大きなグループであり、ロシア極東地域には70種以上が生育している。これらの藻類の多くは、実用上重要なものである。ギガルティナ目からはカラギーナンと呼ばれる多糖類が抽出される。これらは寒天と同様に、強固なゲルを形成する性質を持っている。カラギーナンは構造的に多様な物質の総称であり、食品(ヨーグルト、凝乳ベースの軽食、菓子・デザート類、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、各種飲料、さらには食肉加工品であるソーセージ、ハム、パテ、フランクフルトなど)の増粘剤や安定剤として利用されている。食品産業以外でも、カラギーナンはその幅広い生物活性により、医薬品や医療分野で利用されている。
「海藻養殖場」の大部分は東南アジア諸国(韓国、日本、中国、ベトナム、フィリピン)に位置しており、そこで養殖される藻類の約75〜80%は直接食用に供され、15%は多糖類(カラギーナン、寒天)の生産に、残りは染料の生産に利用されている。しかし、ロシアの海藻資源を医薬品、医療、その他の産業分野で活用する大きな可能性も秘められている。クリル諸島に見られるスギノリ科(Gigartinaceae)の紅藻類(Chondrus pinnulatus、Tichocarpus crinitus、Mazzaella属の種など)には、世界の温暖な地域の藻類から抽出される多糖類よりも優れた特性を持つカラギーナンが含まれている。さらに、それらに含まれるカラギーナンの量は、熱帯産の種よりも多くなっている。
生態学的に極めて重要で興味深い紅藻のグループとして、石灰化するサンゴモ類(サンゴモ目:Corallinales)が挙げられる。その中でも特に代表的なのがサンゴモ属(Corallina)で、見た目は小さなサンゴに似ている。サンゴモ属の藻類は、大気中の二酸化炭素を取り込み、カルシウムと結合させて炭酸カルシウムを形成し、一種の石灰質の骨格を作り出す。藻類が死滅すると、これらの「骨格」は海底に沈殿して石灰岩の堆積物を形成する。その際、二酸化炭素は水に溶けない形で海底や海岸に砂粒として残ることになる。
また、地球上の酸素の大部分が、海洋の藻類やシアノバクテリアによって生み出されていることを知っているだろうか。大型藻類には、褐藻、紅藻、緑藻という3つの主要なタイプがあり、その色はそれぞれ特有の色素組成によって決まる。緑藻(主に植物プランクトン)は最も活発に酸素を産生するが、その総バイオマス(生物量)は褐藻や紅藻よりも少なくなっている。
このように、藻類は地球の生態系において、環境を形成する極めて重要な構成要素である。藻類の研究、藻類群落の健全性の監視、持続可能な養殖技術の開発、そして汚染の防止や生息域(海や海洋)の浄化に取り組むことは、地球の健康、ひいては私たち自身の幸福を守るための大きな貢献となる。(クリル自然保護区ウエブサイト2026/9/16)


