「善意の表れ」―ロシアで収監されていた米国人は、なぜ釈放されたのか?

日ロ関係

ロシアの刑務所で7年近い禁錮刑を言い渡された米国人高齢者の事例について、タス通信が報じている。記事では、モスクワとワシントン間で行われた受刑者交換に対するクレムリン(ロシア大統領府)のコメントや、米国代表団がウラジーミル・プーチン大統領に何を伝えたのかについて詳述する。(タス通信 2026/10/21)

10月20日、ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナ側で戦闘に参加したとしてロシアで禁錮6年10カ月の判決を受けたスティーブン・ハバード氏(73歳)を釈放するよう、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に要請したことを明らかにした。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、「プーチン大統領とハバード氏の件について話し合った。かなり時間をかけて話し、釈放を求めた。どうなるか見てみよう」と語った。さらに同氏は、「彼には戻ってきてほしい。ハバード氏を(米国へ)連れ帰るべき時が来たのだ」と付け加えた。

同日、Axiosおよびイスラエルのテレビ局「チャンネル12」の特派員バラク・ラヴィド氏は、ハバード氏の解放が、オスロでトランプ氏の特使スティーブ・ウィトコフ氏、ウォロディミル・ゼレンスキー氏、そして欧州の代表者らの間で協議された包括的な提案の一環であり、ロシアとの交渉を再開するための土台となり得るものだと報じた。

ハバード氏の釈放

ハバード氏の釈放は、10月21日、サンクトペテルブルクのコンスタンチン宮殿で行われた米国代表団とロシア大統領との会談の場で発表された。米国側のウィトコフ特使は、ハバード氏の釈放についてロシア大統領に謝意を伝えた。「大統領に代わって、また米国を代表して、あなたに感謝を申し上げます。ロシア連邦がハバード氏を解放してくれたことに対して、こうして感謝を伝える次第です。数日前、彼の息子さん―教会で聖職者を務めている方ですが―とお会いして、お話しする機会がありました。彼のお父様を解放してくださったことに感謝いたします」と述べた。プーチン氏は「彼はプルコヴォ空港にいます」と指摘した。ウィトコフ氏は「大統領、承知いたしました。空港でハバード氏と対面します」と応じた。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、プーチン氏が人道的な観点からハバード氏の解放を決定したと明らかにした。クレムリンの報道官は「今回もまた、大統領は人道的な配慮に基づいてこのような決定を下しました」と説明した。また同氏は、この問題について「以前から米国側から提起されていた」と述べた。さらに「一般的に、捕虜交換などに関するやり取りは、情報機関を通じて継続的に行われています」と指摘した。米国側が交換条件としてロシア人を解放するのかというタス通信の質問に対し、ペスコフ氏は「これは善意の表れです」と答えた。

ドナルド・トランプ氏はまた、ハバード氏の解放と引き換えに、米国がロシア側に誰かを引き渡したという事実はないと明言した。「(彼は)帰国の途についており、まもなく家族と再会するだろう。米国は……見返りを一切求めていない。……彼の解放にあたって、いかなる『交換』も行われていない」。同氏はさらに、「ロシアに対する即時制裁を求めていた多くの人々からトランプ大統領のもとに電話があり、ハバード氏解放に向けた交渉の事実を知らなかったことについて謝罪があった」とも述べた。

スティーブン・ハバード氏の事件

スティーブン・ハバード氏は、ウクライナ軍側で戦闘行為に参加したとして有罪判決を受けた。2024年10月7日、モスクワ市裁判所は同氏に対し、一般処遇の矯正施設(刑務所)での禁錮6年10カ月の判決を言い渡した。ハバード氏は起訴事実を認めていた。2022年4月以降の拘留期間は、刑期に算入されることとなった。

ハバード氏は、ロシア連邦刑法第353条第3項(武力紛争または軍事行動への傭兵としての参加)の容疑で起訴された。この罪状では、最高で禁錮10年が科される可能性がある。検察側は最終弁論において、厳重警備の矯正施設での禁錮7年を求刑していた。なお、審理は検察側の要請により非公開で行われた。

ハバード氏自身によると、彼はミシガン州ビッグラピッズの出身である。2014年からは、妻と共にハルキウ州イジュームに居住していた。その後、「(ウクライナ)特別軍事作戦」の開始に伴い、ウクライナ軍に参加した。ハバード氏はロシア軍兵士に拘束されたが、彼らからは適切に扱われたと語っている。同氏は、ウクライナのメディアの影響を受け、状況を十分に理解しないままウクライナ軍のために戦うことを決意したと述べた。その後、ウクライナ紛争についてより深く理解するようになり、ロシア当局の行動についても理解を示した。

ギルマン氏の解放

2026年8月11日、ロシアで有罪判決を受けていた米国籍のロバート・ギルマン氏が解放されたことが明らかになった。

ウラジーミル・プーチン大統領は、この決定は人道的な配慮に基づくものだと説明した。 「我々は最近、自国の刑務所に収容されていた米国籍の人物を米国側に引き渡した。健康上の理由、すなわち人道的な理由によるものだ。彼はごく普通の男で、酒飲みであり、トラブルメーカーでもあり、健康状態も悪い。帰国させて治療を受けさせればいいだろう」と、国家元首は9月初旬に述べた。

ギルマン氏の釈放については、9月6日にクレムリンで行われたウラジーミル・プーチン氏、スティーブ・ウィトコフ氏、ジャレッド・クシュナー氏の会談で話し合われた。その際、ウィトコフ氏は同胞の釈放についてプーチン氏に謝意を伝えた。

「トランプ大統領から、あなたによろしくとのことでした。ギルマン氏の家族は、ボブ・ギルマン氏の帰国に向けたあなたの協力に深く感謝しています」とウィトコフ氏は述べた。これに対しプーチン氏は、「彼らはトランプ大統領に感謝すべきだ。働きかけたのは彼なのだから」と応じた。ウィトコフ氏は「彼らはトランプ大統領にも感謝していますが、大統領閣下、あなたにも感謝しているのです」と返した。

ドナルド・トランプ氏自身も、ウラジーミル・プーチン氏が交換条件なしでこの米国人(軍関係者)の釈放に応じたことに言及し、次のように述べた。「ウラジーミル・プーチン大統領との協議の結果、ロシア側は純粋に人道的な理由から彼(ギルマン氏)を釈放することに同意した。我々はこの決定を高く評価している。また、ロシア側が交換条件を一切求めなかったことも評価したい。交換は行われていない」

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