色丹島にインドネシア人 北方領土で受け入れ進む外国人労働者

色丹島の話題

ロシアのプーチン大統領は8月、北方領土を初めて訪問し、実効支配を誇示しました。その北方領土の色丹島では、人手不足を補うため、インドネシア人労働者の受け入れが進んでいることがわかりました。

NHKは8月、ロシア人スタッフを人口およそ3000の色丹島に派遣しました。

基幹産業は水産業で、北方領土最大の水産会社「ギドロストロイ」の傘下にある加工場では、周辺の海域で捕れたスケトウダラの加工が盛んに行われていました。

この工場では、去年9月からおよそ60人のインドネシア人が働いています。

工場によりますと、地元の働き手が観光業などへ流出したのに加え、従業員がウクライナの戦闘に参加し、一時、人手不足の問題に直面したため、インドネシア人を雇ったということです。

インドネシア人は、仲介機関を通じて、ロシアのビザを取得したうえで派遣されていて、現在、工場全体の労働者の4割を占めています。

マリニン工場長は「彼らは規律正しく、仕事の覚えも早い。彼らもこの場所が気に入っているようだし、われわれも満足している」と話していました。

インドネシア人の労働者が北方領土で働いていることについて、ロシア大使を務めた上月豊久さんは、「日本の領土にロシア側の許可を取って訪問するのは、ロシア側の主権を認めることになる」と述べ、第三国に対しても渡航をやめるよう求め続ける必要があるとしています。

北方領土開発進めるロシア

ロシアは北方領土について、第2次世界大戦の結果、自国の領土になったと主張し、近年は、安全保障上の拠点として一段と重視しています。

このため、経済開発を進め、住民たちの生活基盤を整備することで、人口流出を防ごうとしています。

経済開発では、基幹産業の水産業に加えて観光開発にも力を入れています。

プーチン大統領は、2024年1月、北方領土への訪問を公の場で約束した際、「島々の観光を発展させる必要がある」と述べ、観光開発に力を入れる姿勢を強調しました。

国営タス通信によりますと、北方領土を含む島々への観光客の数は毎年増加しており、2023年が3万6100人、2024年が4万8500人、2025年が5万8000人となっています。

背景には、ウクライナ侵攻を受け、ヨーロッパ各国がビザの発給を厳格化したことで、ヨーロッパへの旅行が難しくなったロシアの人たちが新たな観光地として島々に目を向けるようになったことがあるとみられます。

観光で本土からの移住者も

北方領土への観光客が増加しているのを受け、北方四島のひとつ、色丹島にはロシア本土から移住し、観光ビジネスに乗り出した人もいます。

西シベリア・オムスク州から移り住んだカザフ系ロシア人のムハメトジャノフさん(36)もその1人で、2025年4月、馬に乗って島をめぐるツアー会社を立ち上げました。

この日は、モスクワやユジノサハリンスクからの観光客3人をおよそ5キロのコースに案内しました。

モスクワから来た男性は「ずっとここに来たいと思っていました。ようやく、小さな夢が叶いました」と話していました。

ムハメトジャノフさんは「現在、行政から手厚い支援を受けていて、エサ代を抑えることができています。将来的には、移動式テント、ユルタを設置し、馬肉や馬乳酒を味わうこともできるツアーにしたい」と話していました。

専門家「交流事業復活めざし粘り強い交渉を」

ロシアのプーチン大統領が8月、北方領土の択捉島を訪問した背景について、2023年まで8年間、ロシア大使をつとめた上月豊久さんは、プーチン氏が今月、ロシア議会下院の選挙を前に、各地で遊説を強化していることやウクライナへの軍事侵攻の長期化に伴い、経済が悪化し支持率も低下していることなど国内の要因を挙げました。

そして「北方四島を訪ねることによってウクライナを含む領土問題について譲歩しないということを国内に示し、愛国的な雰囲気を盛り上げて選挙につなげていくという面がある」と述べました。

その上で、「日本との関係においてプーチン大統領はずっと北方領土に行くことは控えてきたが、日ロ関係が冷え込み、日本が引き続きロシアに対して厳しい制裁をしている中でもはや失うものはないと思い、国内事情も踏まえながら今回の訪問に踏み切ったのだろう」と分析しています。

日本政府の対応について上月さんは、高市総理大臣が「中長期的な関係回復を困難にしたと言わざるを得ない」と述べたことに注目しています。

上月さんは「ロシアは、中長期的には関係がよくなる可能性を考えているだろうが、今回のことはそれに影響を与えると、くぎを刺したことは実は強いメッセージだったと思う」と述べました。

そして「いろんな機会をとらえて日本側として問題視していると言っていくべきだ。日本の主張を続けていくというのが基本で動じることなくやっていけばいい」と述べました。

その上でロシアとの外交の中で日本の外務省が一番注視しているのが四島との交流事業の再開だと指摘し「元島民のみなさんは非常に高齢になっていて島を訪問できず人道問題となっている。交流事業の復活を目指して粘り強く交渉していく。これはきっちりやっていくべきだ」と述べました。

一方、上月さんは「わが国の領土にロシア側の許可をとって訪問するというのは、ロシア側の主権を認めることになる」と述べ、第三国に対しても渡航をやめるよう求め続ける必要があるとしています。(NHK 2026/9/4)

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